・  点と        ・  点


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違う。
どうも違う。
この拭い切れぬ違和感は、果して何なのだ?

自分に問いかける。
答えなぞ、分かっている。

…これは、アイツの感触ではない。




毎日のように身体を重ねてきた。
ソレが、日課のように、ソレが無いと一日が終わらないかのように。
気が付けば義務のように感じていた。
ヤラナケレバナラナイコト。
それが、セルバンテスとの、行為。
そう感じてしまうほど、毎日だった。
本当を言えば、面倒だった日もある。
しかし、始めてみると、面倒だったことなど、忘れてしまうことがある。
しかしまた、ただ面倒になって、ただされるがまま、
セルバンテスに言わせればマグロと呼ぶのだそうだが、
まったく横になって動かずに、アイツの愛撫に身を任せていたこともある。

してやる気に、どうしてもなれなかったのだ。

理由は、考えたくも無い。

恐らく、面倒だったから、なのだろう。そういうことにしてしまおうと思う。

ヤツはあの時、全身で欲情に溺れていた。もう、したくて堪らないと言った風だった。
しかし、儂は面倒だと言う理由だけで、されるがままになっていたのだ。
ふざけているフリをしてねだってくる行動がやけにウザウザしくて、
…思い出すだけで、勃ってしまいそうな程の行動だったのに。
何故あの時は…?

あの時に戻って、あのセルバンテスに答えてやりたくも思う。

懐中時計の蓋の裏側をハンケチで拭いながら、その記憶が鮮明になるのを待つ。




今、セルバンテスはここにいない。




あの時、激しく抱いてやればよかったのだ。
それをしなかったから、今、儂は…

壁に背中を預けて、

アイツのことを思い出して

何時しか儂は欲望の肉隗を手の平で擦りあげている


「…っく」


アイツの此処をこうしてやれば、良かった、なんて



「あ、っ」



セルバンテスがやるように、かすかに声を出して。

自分がセルバンテスであるかのように

そう、儂の身体は今、セルバンテスの身体なのだ…

どれほどの快感だ?儂はお前にどれほどのものを与えられている?

それは、

満足できそうか

それは、

…どんなに、気持ちいいものなのか…?

自分に抱かれて

突き刺され

前を擦られて

「は、っ、っ、…、…!」


セルバンテス?


気持ちが、いいか?


どのくらいだ?もっと強い方が好きか?


…!こ、コレはちょっと強すぎるか


「あ、あっ、く、…」


頭に血が昇る…


これはアイツの身体の中の感触とは違う
あの人間たる身体、骨格、肉、血管から筋肉、全てに至るまで、
この儂の体で押し上げて
この手の中の

お前を貫くものが、快感に溺れて悲鳴を上げて

「…っつ、く、う、」

最高だ…セルバンテス…!


ああ、もう、イかせて、くれ…


「はぁ、あああっ!!!!」









自分の、呼吸音に。
…自分が何をしていたのか、思い出す。
結局、儂が満たしたのは自分の体だけであり。
セルバンテスを善くした訳ではない。

汚れた指を床と自分自身を洗い清めて。








ヤツの帰りを待つ。









とにかく、今儂に足りないものが目の前に出現するのを待つ。
儂から行く必要も無いだろう。
求める物は絶対に現れる。
なぜなら、儂もまた、求められる物であるからだ…
確信ではない。しかし、そうでないと言う疑問も起きない。







そうなのだ。当人の快楽ならば、突き詰めて問いかけ、そして当人の口から聞くのが、筋と言うものだろう。





部屋の鍵をかけん自分が、そう嫌いではないとも、思うのだ…なぁセルバンテスよ…





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なんか違う。
参った。実際かなり参った。マイッタ。

自分の指と、アルベルトのアレの感触が違うなんて、よく分かってる。

けれど、今、私はちょっとそれに惑わされて止められるほど簡単な状況下にいない。

あの時、不完全燃焼してしまったことが悔やまれちゃって、
駄目、駄目だ、もっとアルベルトを気持ちよくさせなくちゃ、彼はハマりきっちゃくれない。

どうしたら、もっと気持ちよくなれるのか、アルベルトの体は。気持ちは。





仕事の滞在先のホテル。
バスルームは和風の檜作り。

でも今私が感じたいのは、檜の香りより、アルベルトの青い匂い。




あの時。アルベルトと一緒に部屋で酒を飲んでいた時。
私は、アルベルトの部屋に行った時点で、もうすでにセックスを開始する準備が整っていた。
私の体はいつでもスタートダッシュ。
扉をノックする音を開始の銃声音に変えて、彼の姿を見るだけで、部屋に二人きりになると言うだけで、何かを期待してしまうんだよね。
まずいかね。
まずくは無いよねぇ?
だって、やっぱり、エッチはしたいじゃない。
面倒?感じたこと無い。
自分が気持ちよくなるために、アルベルトにエッチなことをする。
それで、アルベルトがその気になってくれれば、私だって相当気持ちよくなれる。
サイッコウじゃない。そうなれば。
でもなかなかそういうのも難しいもんだね。

あの時のアルベルトは、なんだか乗り気じゃなかった。
とにかく、私が誘惑して気分を高めてしまえば、乗ってくるかな、そんな気がしたから、酒に酔ったフリをして、彼の足にもたれかかってさ。
アグラをかいてる腿の内側に、指先を滑らせて、アルベルトの反応は確かに快感を見せていた。
確かに、彼はあの時。感じていたはずなのにネェ。
前戯から、入れちゃうトコまで、やったはやった。

アルベルトも、ちゃんと射精してたし、私も彼を煽るべく、相当乱れて見せた。

…でも、なんだか、違う、って気がしてたンだよね。



恐らく私が思うにだよ。私の与えられる快感の幅が少ないからなんだね。



仕事の合間合間に、何度も脳内の右の方に過ぎった。



…どうしたら、溺れ切れるのか?



…私は、アルベルトに”ぶっ飛んでもうタマラン!”ッて快感を与えることが出来るのか?



…分からないなら、即実践しかあるまい!自分の体で(苦笑)だって今目の前にあるのはそれしかない。
他の誰かで代わりになるとも思えない。彼は特別さ。
完全に性感帯が同じじゃ無くても試す価値は有るね、必ずどこかヒットするさ、当たる鉄砲数撃ちゃ当たる、だ!
ん?それじゃオールクリーンヒットじゃないか。…そうあれば、一番、楽なのにね。
アルベルトは私に楽をさせないね。
…やってやろうじゃないか、って気になるね。



意気込んで、風呂場で全裸になってみたのはいいけれど。



そう、分かってる、多分私は…
あの時、果たせなかった自分の快楽を、今ここで、何とか吐き出して誤魔化そうとしてるだけ。



今、私がしていることは。


単なるマスターベーションに過ぎないってコト。


内腿の筋肉の線に沿って指を這わせる。
滑りにくいから、石鹸なんか使ってみたりして。

「ひ ゃ、ぁ!?」

あ、ヤバいよ?コレ、石鹸はマズイよ、気持ちイイ…!
ってコトで、気持ちいいからそのまま使用することにした。
アルベルトにも使えるかね。

どうせ、石鹸を使うなら、洗うのも兼ねちゃったら、楽楽だね。

泡立てた石鹸で、体中にシャボンを塗りたくって。
…あ、脇腹カユイ

ぽりぽり。

足も洗って、って、一人エッチするつもりだったのが、なんか私身体洗ってるよ。

なんなのかね、この意思の薄弱さは。

いやいや、そうともいえない、これはある意味前戯なのであるのである!

よーし、と、鼻息をフンと一つ吐いて、って、意気込むことでもないかね

自分に前戯、なんてしたことなかったね。

…アルベルトにいつもやっているように、やってみたら。

彼がどれくらい気持ちいいのか、少しは分かるだろうか。

とにかく、足の先まで洗って、と。
前戯たる全身洗浄であるから、当然、手に泡をつけて、手の平で全身を洗うことはまず不可欠要素だね。

足の先まで、洗って。靴履きっぱなしだもんね…ヤッパリ匂いとか気になるよね。
もとい!アルベルトの鼻に靴下でも入れたら、悶絶するかもね。
…う、前戯の最中に笑っちゃったじゃないか!駄目じゃないか自分!

指先に、泡のついた指を滑らせて


「…!」


足先の
親指を人差し指の間。
その部分に指が滑り込む感触。


指先と指先は、少し膨らんだ形だから、指と指の間の股部分には、かすかな隙間ができている。


よくみると、いやらしいよ。


…もう一度、その隙間に、指先を滑らせてみる。


「っ、うう、ん!」


あ、コレ気持ちよすぎる
アルベルトに絶対やッてあげよ
あ、

いい


すご


「アル、アルベルト…」


気持ちいいかい?
ここで
足の指なんかで感じちゃったりして
君はイケナイ男だね?いいんだろう、ここが、


「あ、あ、っ、イイ…」


こんな所で感じるの?変態?キミ


「っはァっ」


ソコ、もっと擦って…


「どうしよぉ…気持ち、いいよぅ、あ、はぁぁっ」


身体、がくがくする。昇天しかけた女みたいに、舌具を天に突き出して



私の身体はたった今、アルベルトの身体。



私が善がれば、アルベルトが乱れる。


アルベルトが乱れて叫ぶ


「…ッ、其処だけでは足りん、じ、焦らすなァ…」


そう、アルベルトにこんな事言わせてみたい



「…最高だ…セルバンテス」







やば




そんなコト言われたら





…私、漏れちゃう、よぉ…!!!















結局。
あの時私が満たせなかったアルベルトは、私の想像内で満たすことは不可能であるわけで。

アルベルトを、不完全燃焼にさせた自分が憎い。

何故だろうね、彼のためなら、最上級のテクニックを身につけたいなんて思う。
…快楽を追求するための手段は色々講じた。
しかしねぇ。
分かっちゃったんだよ。私は。

君の身体は、私の想像では補えない。



そうだろう?



ふふ、髪が濡れたままだ。
湯冷めしないように、気をつけなくちゃね…外の風はまだ冷たい、から、ネェ。







__・_____点と___・_______点を繋ぐ___________


________線_______点と点は今__________地球を一本の線に変える力を持つ









くしゃみ一つ。


含み笑いと、


暗い部屋に 指先の触れ合う感触を頼りにして








お互いの快楽を今、自分のものにするために








今日は、探りあいと行こうじゃないか。








   たった今 理解したぞセルバンテス。


   「面倒」の理由だ。







   …儂はお前を探りきれているか、自信が、無いからだ。







   いいか、逐次報告しろ。
   イイのか悪いのか、それはどのくらいなのか。


   イヤとは言わせん。無論儂もイヤとは言わん。…言わんと思う。


   あまり、心配させるな。

   儂は自分が臆病であることが気に入らんからな…








くしゃみ一つ。



含み笑いと、



暗い部屋に 雄の 匂い














________:______絡み合う点は______いつしか必ず線に_変わる







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コメント
小説?コレ。
こういうお互いを気持ちよくさせようって気持ち、凄く大事だと思うのですよ。
事後に「よかった?」って聞く男の心境ですね(笑)
聞くのはそりゃ確かによくないけど、聞くッてコトは、自信が無いわけであるからして。
相手を気持ちよくさせたいって気持ちの裏返しなんだろうな。
でも聞かれたくないよね(笑)