危険分子


暗闇の中、そこに居るのを確かめるかのように

性急に汗ばむ肌を手の平で探る

「あ、アルベルト…」
私の声に答えるのは、かすかに荒い息の音。
足を持ち上げる手の指の感触に、喉を鳴らして動きを止める。
そう、いつでも待ってる、待ってるから私は君を引く
何度も何度も引いて君がこっちに来るのを待っているのだよ
そう、もっと、もっとこっちに、ああ、どうせなら、私の中に君が全部入り込んでしまえばいいのに
その君の欲望の塊だけじゃなくて!
そう、いっそ
いっそなら。









君の全てを この口 で 飲 み 込 ん で し ま い た い











「ふぃ〜」

「満足そうな声を出すな、みっともない」

「みっともなくていいの〜」

「みっともないのはみっともなかろう」

たく。アルベルトってのは、一度言い出すとなかなか主観を曲げないね。
いつもみたいに私の言葉で丸め込んじゃってもいいんだけどね。
アルベルトの思考なんて、いつでも私の心一つで動かすことが出来る。
けれど、ソレをやろうと思わないのは、彼が仲間だから。
BF団?アッハハハハハハ!!!!!そんなもの関係ない、仲間ってのはそういう意味じゃァない。
そう。
私の
私という生き物の仲間。種族。同じ匂いを持つもの
BF団の団員はみんな似たような匂いがする。
つんとくるような、熱く尖った男根みたいな匂い。
アルベルトにも当然その匂いはあるし、恐らく私にもそれはあるんだろうね。
ちがうちがーう。ちがうのだよ。その匂いが同じなだけじゃあないんだ。
アルベルトだけなんだ。
その熱い匂いを私に絡みつかせてきたのはね。

その匂いに絡み疲れて締め上げられるだけで私は恍惚に浸ることが出来る。

いわばだね。

私は私自身の快楽のために彼を友人にしていると言うわけだ。

セックスなんて、布石の様なものさ。
身体をあわせるあわせない、そんなの関係なく、アルベルトという生き物は私をその存在だけで快楽に導いてくれる。
そんなオトク感がなけりゃ、アルベルトなんて私にとってはどーでもいい生き物になるわけ。ね。


「では儂は、オトクな生き物だといいたいのか?」

「ノーノー、ちがーう。オトクなのは私。」

「は?」

「ん?」

「だからだな、」

「だから、君がオトクなのは私で、私がオトクだから…あれ?」

「セルバンテスお前バカだろう」

「ヌガッ!ナニソレ!ナニ!?ワタシバカ?」

「カタカナで叫ぶこともあるまい」


へいへい、私はどうせ馬鹿ですよだ。
…ふふ。馬鹿かもね。
今日だって、ベッドが目の前にあるってのに、テーブルの上でセックス、だもんねぇ。
それに付き合ってる君も相当な馬鹿ってことにならない?


「儂は、そういった枠にな、そう簡単に収められるのは気分がよろしくない」

「私はいいわけ?」

「お前はいいのだ」


腰掛けたテーブルが、私の汗に濡れて少し滑るね。
手の平でテーブルを軽く撫ぜると、雄の匂いが指に絡みつく。


「ねー、アルベルト」

「なんだ」

「なんで君はいつも、ベッドで休むの?」

「?当たり前だろう」


そう。アルベルトは、部屋のどこで私と絡み合おうが、その行為が終わった後、
すぐにシャワーを浴びに行って。ほかほかした身体のまま、ベッドに仰向けに座ってる。


「それは儂が逆に問いたいわ。貴様は何故行為が終わった後に平気でその場に鎮座しているのだ」

「んー」

「わからんのか」

「まだ体が熱いから、かな」

「…まだするのか?」

「んーん。そういう意味じゃなくてね。」

ぺち、とテーブルを叩いて。アルベルトのおでこを叩く代わりなんだけどね。
だって遠いんだもん。面倒じゃない、わざわざアルベルトのところまで言って頭叩くの。
…当然、私は裸のまま。テーブルに乗せたお尻も、まだ素肌。
腿の内側がなんだか乾いてきた感じで、ちょっと手でなでてみたらカサカサした感触が指に残る。
「お、おい。」
「ん?」
「どこを撫でているのだ!」
「ここ」
って、アルベルトに向かって足広げて。
「貴様はなんでそうはしたないことを平気で!」

しょうがないなぁ、と、足を閉じて。
なんだか女みたいで気持ち悪いから、閉じた足を開きなおして
「セルバンテス!」
「お父さんみたいにガミガミ言わないでよ〜」
と、足を組んで。
「これでいいでしょ」
「…う、うむ」
「なんで君は、エッチは平気でするくせに、我に返るとそう御堅いかな」
アルベルトが目を閉じた。
あ、顔が引きつってる、いまぴくって動いたの見えたもの。
とんとん、と、葉巻ケースを爪で叩いてから開くと、一本だけ咥えて。
「ちょっとアルベルト。葉巻タイムにしちゃうわけ?」
「…悪いか」
「悪いー」
「何故だ」
口に咥えた葉巻を手にとって、私を見る。

だってさ。

葉巻って。吸い始めると30分かそこらは吸ってるでしょ

「まあな、葉巻とは元来そういう楽しみ方を…」

あーはいはい。

…わかんないヤツだよね。アルベルトって。
葉巻を吸うってことはさ。
私を無視するってコトと同じなんだよ。

私流の礼儀からすれば、あまり…よろしくない行動だね。

そう、いつもアルベルトはそう。
終わったらすぐに自分の世界に戻っちゃう。
…こめかみの血管がやけに細かく動く感じがしたから、指でグ、ッと押さえた。

「…。何か不満なら言え」

「べつにぃ」

「お前は饒舌なようでいて無口だな」

「…」

そうかもしれないね。
論理とか、建前とか、口先三寸だったら、得意だよ
得意だけど…
君の匂いにやられると、私は途端に簡単にしゃべれなくなる。

いいねぇ。君は自然体で。


「お前こそ自分勝手に好きなように生きているだろうが」

「そうかな」

「…こっちへこい」

「ナニよ突然」

「いいからこい」

「いやだね」

「来いといっているだろう!」

「なんで!」

「…ソコは儂から遠い!」


じゃあ、
じゃあ、



君が来ればいいじゃないか。



なんか、腹立ってきたよ。
さっきまで、体あわせてたのにおかしなもんだよねぇ。
テーブルの上に無造作に置いたスーツの中から、小型拳銃を取り出して。

君に向けた。


「…」


君が私をにらむ。

私は余裕の表情で君を見て笑う。

君の無表情と

私の笑顔と






裏側を見れば多分それは逆







「笑うなアルベルト」

「笑っておらん」

「君は笑ってる」

「…お前こそ笑っているだろう」

「君は、馬鹿だね。相当の。馬鹿だからアルベルトなんだろうねぇ。」

そうだよ。
君は相当な馬鹿だ。

「笑うなセルバンテス」

「笑ってないよ」

「…その作り笑顔をやめろ」

「…」


なーに、それ


えらそうに



知ったような口

















体中が弛緩して。

君に向けた拳銃を引き金に手をかけたまま、ああ、銃口を舐める私は


「ねぇ、…アルベルト。セックスしようかァ」

「…どうやら、互いにそういう雰囲気だな」

「だからシャワーなんか浴びなくてもよかったのに」

「儂の流儀だ」

「私の流儀と合わないねェ」

「そうだな」

「そうだねぇ…ふふふふふふ、っくく…」


よーーーーーーーーーーーーーーーく。知っているんだよ。
君が見ている私
その私の中の君に火をつける行動
私は君の火種になって
君はその炎をまとって私に絡み付いてくる

…ああ

するとその炎の主は…ワタシ…










アルベルトの前で、君が言うはしたない足を開いて。

ほら、ここ。カサカサ。

「…コレはお前のだろう」

「君のかもよ?」

「どっちだろうな」

「さぁ…」

テーブルの上で足を開いた私の前に屈み込んで。
内腿をゆっくりと撫ぜ…

「あ…」

その舌がソコを軽く舐める

「…っ、ん」

「お前のだ」

「…味でわかるもんかい?」

「さぁな」

「…君も好きだねぇ」

その火種になるのはいつも私だろ?

この私が火をつければいつだって君は燃え盛る

ダイナマイトの頭を抱えて、快楽にもう一度身をゆだねて
葉巻なんか捨てちゃいなよ。いいから。葉巻タイムはまた後で。


だって

だって。ねぇ。


君はワタシと一緒にいるんだから。私がいる限り、ゆっくり葉巻なんて吸わせてあげないからね。



「我侭め」



そういって君が笑った。




笑みを含んだ唇が合わさって
ああ、また始まる、もう一度、その繰り返し





アルベルトは火種が無ければ笑わない。
そう、私がいなけりゃ君は…葉巻を吸って時間をつぶすくらいしか楽しみがなくなるんだよ




君が私の手の中に落ちる限り。




…BF団なんてぇ、目じゃぁ、ない、ねぇ……
いやだね、私ったら、笑いが止まらないよ…

とまらないよ…



あとで…ねぇ…君の葉巻を少しだけ


ねぇ…少しだけ、私にも君のその時間を…味わう時間を…












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コメント
リハビリで、軽いエロ小説です。
これからまた頑張っていくと思う。
もっと自分を見たい。アルベルトとセルバンテスを見たい。
二人は単なる求め合う関係じゃなくて、人間的な…なにか欲求を模索している
それは多分私の鏡。