細い階段を昇り、まるで非常口のような扉を開く。
すると、今までとは打って変わった空間がその中にある。
絨毯敷きの床に、広い寝室、ベッドは無論一つで、しかも、むやみやたらと広い。
ソファーがその向かいに一つ、その前に小さなテーブルが一つ。

テーブルの上にはご丁寧にライターが置いてあり、小さな灰皿がポチンと蹲っている。

入り口を向きなおすと、壁伝いにもう一つ通路があり、その奥はどうやら、洗面所になっているようだった。

つい、その中を確かめに行く。
大きな鏡に自分が映り、思わず目を逸らした。
洗面所は大して大きくはないな。
化粧品類が戸棚にきちんと収まっているが、こんな誰が使ったか分からんものを使うヤツなどいるのだろうか?
これは…

がーーーーーーー

「!」


…な、なんだ、単なるドライヤーか。


儂も、見れば分かるだろうに、何故スイッチを入れるか。


ふと見ると、右手にガラス張りの扉。
ひょいと覗き込むと、丸い形の浴槽に、流れっぱなしで溢れている湯が見えた。

「ちょっと?アルベルトどこ行っちゃったのさ?」

セルバンテスの声に、我に返り、声がしたほうに顔を出す。

ソファの上にクフィーヤを投げ捨てているセルバンテスが見えた。
くる、と向き直ったそれと目が合って、しばし沈黙する。

「どしたの?」
「…いや、なんでもない」
「…あのさー」
「なんでもないと言っておるだろう」
「ん、ああ、そっちお風呂?ちょっと見せて」

つかつかと、何事も無いかのような足取りで儂の横を過ぎ…一瞬儂が緊張したのに気づかれなかっただろうな…
そのまま、おもむろに風呂場の扉を開けて中を覗き込む。
「まーまー広いかな」
「そ、そうか」

声を背後に受けながら、ベッドルームに戻る。

絨毯を踏む、靴下の足がどこか落ち着かない。

仕方ないので、ベッドに腰掛けてみる。

バフ、と上がった空気の中に、一瞬、雄の臭いを感じて、顔をしかめて立ち上がった。




そう。

儂が今、いるのは、通称ラブ…
うむ。
ゴホン。
ラ。




まあいい、酌め。




ん?
ふと、テーブルの上の、灰皿の脇に置かれた四角い黒い箱に気がついて、
それを確認するべく近づいた。

なんだ、リモコンか。

あまりに大きすぎて気にならなかったが、部屋の壁の真ん中に、鎮座するかのようにドカンとテレビが置かれている。
こんなもの、どうするのだ。
テレビを見ろとでも言うのか?
こんな場所でか?
まるでテレビを見に来るのが目的かのような大きさだぞ、これは。

ジャー

「?!」

振り向くと、洗面所でセルバンテスが何かをしているらしい。
そうか、水の流れる音だな。

「セルバンテス」
「ん?なに?」
「…このテレビは何だ?」
「…へ?や、それテレビだよ」
「いや、だから、このテレビは何だ?」
「えーっと、多分テレビだと思うけど」

…埒が明かん。

とりあえず、リモコンのスイッチを押してみることにした。

ブン

!テレビがついたぞ!?

…落ち着け儂。当たり前だ。

テレビの中では、普通にニュースが流れており、万引き犯がどうたらこうたら、何処かのパレードでどうたらこうたら


これを見てどうするというのだ?

わからん。

どこかに仕掛けがあるのか?

何か意味があってしかるべきなのだろう。だろう?ここは、その、ラブ…とかいう場所だぞ。
と言うことはだ。
それなりのものしか置いてないと儂は踏んでいた。
まず、部屋の扉を開けるのにも、相当覚悟して開けたのだ。
それでまずふつうの部屋だぞ、普通の!!!
絨毯があり、ベッドがあるぞ。
テーブルがあって、ソファがあって、
普通ではないか!!!
どこが、その、ラブなんとかなのだ。
そもそもこのテレビは何だ?
どのあたりがラブ何とかなのだ。

近くに寄って、画面を見てみるが、別段変わったところは無い。

…もうちょっとこう、禍々しい物を想像していたのだが。

少し、安心するな。こう、普段の生活と換わらないものを見せられると。
ふむふむ、そうか、おお、テレビが日本製だ。
じゃあ、この灰皿は?
コリアン製か。まぁ、まったくそうだろうな。
テレビのチャンネルは変えられるのか。おお、変わった。お、コマーシャルも映るのか。
…ふむ。これは想像とはちと違うようだな。



そうか!
こうやって、安心させて置いて、なにかあるのだろう!
これは恐らく、表の目を誤魔化すための何かだな!?

「おいセルバンテス!」
「なに?」

ひょっこりと洗面所から顔を出して、当たり前のような顔をして、儂を見る。
そんな顔をしている場合ではないぞ。

「絶対何かあるぞ、この部屋は」
「…ん、まあ、なんかあるだろうけど……アルベルト、君って…さぁ」
「いい、ああもういい。お前には分からんのだ。」
「…んー」

セルバンテスは苦笑いを残して、また洗面所に引っ込んでしまった。
まったく、なにをだらだらと水遊びをしておるのだ。
手にしたリモコンをじっと見て。
ボタンだらけでよく分からん。
数字がかいてあるのは、恐らくチャンネルだろうな。
ポチ。

『あ、アアン、太い、すごいわァ!』

「ぬあ!?」

なんだ?!突然画面いっぱいにモザイク?!
なんなんだ、ちょっとまて、落ち着け、とにかくリモコンをどうにかするのだ。
どうにか、って、どうするのだ!
ああっ!?音が大きくなったぞ、ちょ、ちょっと、こ、これは



洗面所を伺うように見ると。
壁を引っかきながら声も無く大笑いしているセルバンテスの姿。

「な、何とかせい!」
「…はーはー、き、君初めてだったわけね?」
「…」
「君、ラブホテル初めてだったわけねー?」

にー、と、笑って。
手に持ったコーヒーカップのうち一つをテーブルにコツンと置くと、
もう一つのカップを口につけて、そのままテレビに目を向けて。
見、見んでもいい!男同士でこんなものを見る趣味は儂には無い!

「…へたくそな演技だねェ」
「演技?」
「この女優。感じても無いのに声ばっかり出してさ、あ、しかもコレ入って無いでしょ」
「は?」
「入ってないの。ペニスがヴァギナに。」

危うくリモコンを取り落としそうになって、慌てて握り締めた。
途端に、チャンネルが変わる。



『と言うわけで、黙認しているわけですが…』
『入った入らなかった、で、弁護士側と法廷側がもめているようですが』
『そもそも事件が起きた起きなかったかと言うことにつきましてですね…』



「コーヒー飲むかい?」
「…あ、ああ」
リモコンを、テーブルの上において、そのまま、そのカップを手にとって、

って。

「セルバンテス。なぜ貴様そう落ち着いている?」
「なにって、別に?あ、お風呂入る?」
「…い、いや、ああ、え?」
「落ち着きなよ、ちょっとさァ…なんか私まで緊張するじゃない」

そうは、言っても…だな…
そもそも、ここの場所は、それをするための場所であって。
ここに来たと言うことは、それが大前提なわけであろう。
それと伏せる必要も無いか。行為だ。
行為が大前提であるわけだろう。
そもそも、このベッドだって、そのためにあるわけで、
ということは、今までにどれだけの人間がここで痴態をふるってきたかと思うと、
もとい!それ以前にだ!
今現在、隣の部屋でどうたらこうたらになっている、あんなのや、こんなの!がいたりとかするとするとだな!

「それは、どこにいても同じだと思うけどな」
「え?」
「私たちが街を歩いているとする。そしたら、その路地裏では誰かがレイプされたかもしれないし、
私たちが見上げているビルの中では、今まさに入れようとしているか、今まさに絶頂を迎えている人間がいるかもしれないんだよね」

ま、まあ、そうだが、しかしそれは極論であって…

「ここだって、そうだ。大して変わんないよ。」
「そ、そうか?」
「さぁ?」

さぁ、って、貴様なぁ!

テーブルの上のリモコンを取ったセルバンテスの指が、
そのボタンを軽く押す様を見つつ、カップをテーブルに置いた。

「ああ、コレは本当にやってるね」
「!」

画面に映し出されたのは、女がなにやらを口にほおばっているシーン。

慌ててリモコンを取り上げて、電源を押した。

プツン。

「…あら」
「い、いい加減にしろ」
「してあげようか、クチで。やり始めれば、どうッてコトは無い」
「…しかし」
「しかしもへったくれもなし。ほら、こっち来なよ」

セルバンテスが儂をベッドに導く。
それを、行為をするためのベッドへ。
さすがに、気が、引けると言うものだが、何故こいつは気にもせんのだ。
無頓着にも程が…
「うわっ!」
肩を掴まれて、バランスを崩した儂は、ベッドに体を直撃させた。
体が、その柔らかさの中に沈みこむ。
枕からさえも、雄の匂いがする。
…耐え、られん
「我慢しなさい」
「儂は好かん!」
「…たまには、何にも気にせずにそれだけに浸るっての、して見たいんだよ、私は」

口元に、コーヒーの匂い。
もがく儂の手を取って、ベッドに押し付ける。

「儂を女か何かと一緒にするな」
「してないよ。お嬢さん」
「…加減があるぞ!セルバンテス!」

ゴメンゴメン、と、笑って。
その手には、いつの間にか、紙製の箱が握られていた。

「なんだ、それは?」
「枕元にあったの。ほら、サイコロ」
「サイコロ?」
「ポーン」

おもむろに、それを投げて。
儂の耳元に転がったそれは、音も立てずに枕とベッドの間に挟まって止まった。



顔を横に向けて、そのサイコロを確認する。

「なんだ?」
「んーーーーーー、耳っ」
「耳?」

儂が答えるが早いか、セルバンテスの唇が、耳元に息を吹きかける。

「いいいいっ!?」
「ミミ。」

ぽそ、と小さくつぶやいて。
その声は、すぐに湿った舌先に唾液が絡む音へと変わる。
待て。
待たんか、
セルバンテス!
儂はまだ、いいともなんとも…言ってはいないと言うのに。
いつも、勝手だ。
いつも自分のペースで。
いつもそれに儂を勝手に巻き込む。

儂の都合など、お構いなし、なのか。

濡れた舌先が、耳の輪郭をなぞり、聴覚を塞ぐべく、奥へとその先を進めてくる。
セルバンテスの口内に響く音が、ダイレクトに音として伝わって…
「…っく」
「ん…ね、気持ち、い?」
「…たいしたことは無い」
「うそ」
ピチャ
「…っ」

念入りに、儂に心地よさを与えるためだけに、その舌先が動く。
懸命に。
儂だけを狙って。

…儂の快楽だけを狙って。

「…セルバンテス」
「…ん、なに?」

…お前は、コレが欲しくは無いのか。

小さくすぼめた唇から、暖かい息を吹きかけられると、背筋がゾク、と波打った。
いいのか?セルバンテス。

儂の快楽ばかり、追い求めても。

お前は、いいのか?

「んー、次ッ」

コロン。

サイコロを振る手を、ボンヤリと見詰める。

…何かを期待して。

「ユビ」

「ん?」

「ゆ、び。貸して」

シーツの上に無造作に置いたままだった儂の手を取って。
口を開き、
舌先を見せ、
儂を見る。

「…」

儂の、指先が。

その舌先に、もう少しで触れる。

…もう、少し

「…ン」

指の先端に舌先を軽く当て、そのまま、絡めるように口内へと、吸い込む。
暖かく濡れた感触。

「はっ…」
「ん、む…」

つい、指が曲がる。
それでもその舌は指を追いかけ、舐り、引き込んで

無意識に、指を動かしていた。
セルバンテスの唇を、その指で犯す。

「ン、ンッ…」

口元から唾液が漏れ、指を伝って流れ落ちる。
唇の隙間を軽く摩擦すると、目を閉じて、くぐもった息を漏らした。
口元から溢れるように溶け出した粘膜が、指の股をなぞって…
…う
…そこは…

「あ…」
「…ココ、好き?」
「…っ」
「好き?」
「…悪く、ない」
「好き、って言えばいいのに」

楽しそうに、儂の顔をうかがって。
もう一度、そこに舌を這わせた。

…もう、すこし、もう一度…

欲しくなりかけて。

ぐ、と自分を抑える。

しかし、

その舌が、もう一度、いや、何度も、そこに欲しい、と、思ってしまうのは、

…くそ

離れる唇を危うく指が追いそうになり、
それを笑われる。

「欲しい?」
「…遊ぶな」
「いいじゃん、たまには」
「じゃぁ貴様の指を貸せ」
「え?」
「同じ目にあわせてやる」
「…え…っと、サイコロ!」

ぬう!

はぐらかしおって!

コロン。

枕元に、また、サイコロが転げてくる。

うう、いつまでこんな遊びを続ける気だ。
儂はな、そもそもだな!
そもそもだな!
…うう、
そもそも、なんなのだ儂!

うー、っと、目を閉じて、
思い切り開きざま、いい加減にしろ、と怒鳴りつけようと

お?

目の前にセルバンテスがいない。


確かに、体にかかる体重はあるはずなのに



カチャ。


「!」


チー


「おおおおおおおおい!!!」


「や、だって、サイコロにアソコって」


「お前の人生それでいいのか!」
「あ、ウン、今はいいやそれで」

なんとな!

パク

「ッ!」

「ん、…汗、かいてるね、しょっぱいよ」
「…う、うるさい、ならばするな!」
「あ、そう?して欲しくない?ここ涎垂らしてるけど、すでに」
「…」

わかっている。

そこを、すぐにでも。
すぐにでも…

わかってはいるのだ。

いいのか。

しかし、いいのか、ここは、ここは…

なぜ、羞恥の一つも感じんのだ、セルバンテス。

「恥ずかしい?」
「…」

儂の目を見る目に、目を合わせた。
何故こいつはこんなことが出来るのか。
プライドたるものはその中に無いのか?
どこのどいつが使ったのか、どこのどいつがここで快楽に溺れたのかもわからないような所で。
同じように、それと同じように、
それと同レベルのことをすることに。
恥は、

無いのか。

「…それを言わないでよ」

笑ったまま。
困ったように笑ったまま。セルバンテスは体をかがめた。
「…う」
粘膜内に、吸い込まれる感触。
腿に添えられた手が、そっと離れて、咥えた口元から儂の屹立したものをねじ込むように擦りあげた。
「…ん、ッ、く」
「あは、ぐしょぬれ」
「一つ、質問、させろ」
「なに?」

親指が尿道口を探る。

「んんんっ!っ」
「ねぇ?なに?」



先を割り、こじ開けるように、何度も!



「っはっ、セ、セルバンテス!」

「だから、なに、って聞いてるのに」

「だ、駄目だ、ちょ、っ、っく」

「ねーえ?なんだい?喘いでばっかりじゃわからないよ」

「き、貴様ァ…っ、」

「なんだい?ほら、頑張って言って御覧」

「…貴様も自分で擦らんか!」

「え?」



一瞬、指が止まって。

儂を覗き込んでいた目が、ぱちくりと瞬きを繰り返す。

一つ、深く瞬きをして。
空いた片手を、自分の口元へと持ってくる。

儂の目を見たまま。

その指を、

ゆっくりと唇に、差し込んでいく。

抜き差しを繰り返して、
まるで

自分を犯すかのように。

抜き出した指が、てらてらと光っていて、そこから垂れた唾液が、儂の頬を濡らした。

「…ッはぁ…、これでいい?」
「…そこは、違うだろう?」
「……しょ、正直言うとね…私そろそろイキそうなんだよぅ」
「え?」
「…変だと思うだろう?」
「お前、何もしておらんでは…」
「う、うるさいな、聞かなかったことにしなさい」

そんなコトをだな。今更言われても。

確かめたくなるではないか。

本当なのか。どうか。

もう一度、身をかがめたセルバンテスが、雁首を唇に収めるのを確認して。

足を、無理に大きく開いた。

「?」

ちら、とそれを横目で確認して、それを勝手に了承と受け取ったようだ。

そのまま、
その足先を、セルバンテスの内腿辺り目掛けて、


ずぼ


「っ!!!!!」


ビクン、とのけぞりあがった身体が大きく痙攣して、儂の足に突っ張った指がぶるぶると痙攣を繰り返す。

…ほ、

本当、

だったのか!?


「く、ッくッ、ン…ッ!!!!!」


ぽかんと口を開けたまま。
セルバンテスが絶頂を迎えるのを、まじまじと見詰める。

しばらくの間、股間を抑えるようにして息を切らしていたセルバンテスが、キッと目をあげて儂を睨んだ。

いや、これは、すまなかった、と言うべきなのか?

じと、と儂を睨み続けるセルバンテスの目が、ジンワリと涙ぐんでいる。
まるで、儂が悪いことでもしたかのようではないか。
そもそも、まずお前が儂をオモチャにするようなことをするのがイケナイのだ。そうだ、お前が悪い!

「…換え…、無いのにぃ」
「え?」
「君も同じ目にあわせてやる!」
「な、何ッ?!」

ガバ、と、突然儂のズボンを履かせ直すと、
「!!」
気、気持ち悪い!
「このままたっぷりイカせてあげるよ、絶対に。絶対に、ねぇえ〜??」

儂は。
ちょっとした悪戯で、セルバンテスのまずい部分に火をつけてしまったようで。





そして、愕然とする結果に。



股間共々、項垂れたのであった。









風呂に入って、そこに寝そべったまま、セルバンテスが泡を飛ばしてくるのを手で払う。
普段、泡風呂などというものに縁が無い儂は、
とにかく、このブツブツと鼻先ではじけていく泡が気に入らん。
明るい室内で、湯に使った裸身が見えないというのは、まあ、酌める部分ではあるかとも思うがな。
風呂場の向こうで、がーーーーーーーー、と唸りっ放しのドライヤーは、
いまだ雫を垂らす洗濯物へと向けられてぶら下がっている。

まさか、この歳になって、自分の…

「夢精した時みたいだったよね、あの感触本当にヤ!だよねー」
「ならばさせるな!」
「なに言ってんの、先にさせたのは君だろぉー」

潜水艦が突然浮上するように現れた爪先に、顔を踏まれて
「ぬがっ!」
「へー」
「貴様!」
「んぶ!」
その足を掴んで、そのまま引っ張ってやると、泡にまぎれてその姿が見えなくなる。
「お、おいセルバンテス?」

ざば!

「ぬはー!!!目にしみるじゃないか、もう、罰として私の背中を洗いなさい!」
「は?何故儂がそんな三一(サンピン)みたいな事を!」
「し・な・さ・い」
「…」

大きく一つため息をついて。
背中を向けてきたので、仕方なくその背中をなでさすってやる。
これが背中を洗っていると言う事になるのかどうかとなると、どうもその様には思えんのだが。
なぜ、あの時、セルバンテスがあんな簡単に終わったのかと考えてみる。
ずっと気にはなっていたが、どうにも解せん。わからん。理解できん。

「にゃはは、くすぐったいよぅ」
「洗えといったのはお前だろうが」
「後で私も洗ってあげるからねン」
「…好きにせい」




ずっと。
自分の快楽を後回しにして、儂にそれを与えていた。
…こいつが、時々不思議になる。
我侭で自分勝手で人の都合なんてまったく考えて無いクセに。



そっと、背後から軽く抱きかかえた。

「えっ?な、なに?」
「いや」
「……アルベルト…えーーと?…」

唇に触れた髪を軽く口に含むと、石鹸の苦味が口の中に広がる。

気持ちよさそうに目を閉じて。セルバンテスが儂にもたれかかる。

「落ち着いたみたいだね?…慣れた?」
「いや、ここはやはり好かんな」
「…理由が聞いてみたいな」
「…さぁな?お前の胸の内に聞いてみろ?」
「…私の?」

儂が気がつかないとでも思ったか
儂に届かないとでも思ったか。

抵抗もせずにベッドに沈んでいた儂に

何の疑問も持たぬとは…



目を閉じて。遠くにドライヤーの音。
あれが乾いたら、そうだな、一つ映画にでも付き合え。
儂が嫌いなB級コメディーでも見に行こうじゃないか。




無理やり。お前が笑わせればいい。
無理やり。お前が。笑わせれば、いい。






おかげで、少し落ち着いた。
…馬鹿でチョンでどうしようもないお前となら、こういう場所も、まぁ、悪くはない。好きでもないがな。







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コメント。

散文か?!という勢いの滅茶苦茶さ加減で申し訳御座いません。
とあるチャットで、アルとセルがホテルに行って、
アルベルトがおろおろ、セルバンテスにいいようにされちゃう、っていう話がちょろっとでまして。
書いてみたのはいいんですが…せっかくホテルが舞台だって言うのに、小物殆ど使ってない!
うう、アルベルトは観音開きの下の段に入っている自販機には気づいてくれませんでした。
気づいていたら、リングとかバイブとかローションとかそりゃすごいことになってたんでしょうけれども(笑)

アルベルトって、どんなときでも、こう、根っこの辺りがしっかりしてそうなイメージがあるデス。
なにか、馬鹿のクセにお見通しって言うか(笑)
それが間違ってたりすることも多々にあるんですが、
時にものすごいクリーンヒットを出して、相手に大打撃、もしくは大感動を与えてしまうような。

ちょっと関係ない話になりますが、恋愛ってそんな感じですよね。
相手のこと、想像して考えて、
ああじゃないか、もしかしたらこうじゃないか、なんて不安になってたりすると、
全然あってなくて、考えすぎだったってことになったり、
それがクリーンヒットして、相手が突然泣き出して飛びついてきたりね。
私はそういう恋愛が好きです。
好きになるなら、やっぱり、相手をドキドキさせたり、驚かせたり、
そういうことがしたいんです。
ただ、相手といて楽しい、それだけじゃ…
だから、一生懸命相手を探ります。
どんなものが好きかな。
どんなもので喜ぶかな。
今、どこがつらいのかな。
つらいなら、どういうことを、どういうものを、その目の前に出せればいいのかな。
つらいときに優しい言葉など要らない時だってある。
そういう時に、胸倉を掴んで笑ってやれたら。
相手が自分でそれが欲しい、って分かっていない部分を、ぎゅっと掴んであげたい。
それで、傷つけるようなことがあっても。
取り繕うだけのものなんか、いらないと。そう思うのでありました。
一過性の「大丈夫?」なんて言葉。
…なんの、意味があろうか。恋人(大事な人)に対して伝える言葉はいつも。

人事じゃ、無いのだと。


「大丈夫?」
なんて、誰にでも言ってもらえることを、大事な人にはしたくない。

なんちて。

でもでも、大丈夫?って言葉も、重要なときもあるよね。
それが必要なときがあることも、知ってます。

同情を求めてくるだけの相手なら、そもそも恋人になんかしやしませんね(笑)
同情を求めてくるだけの相手なら、そもそも。大事な人扱いも、出来ません。


「同情して(くれるなら誰だっていい)。」だなんて、誰しも言われたく…無いものです。
だって、それは自分を「烏合の衆の一人だ」と、言われてるのとそう変わらないと思うから。


ああっ


長い…Σ( ̄ロ ̄lll) ガビーン


あ、補足。
ちなみに、男性が刺激もなく突然イクってコトは
そうそうないです(笑)
よほどのマゾか、薬でも使ってなきゃぁねェ…。