「はぁ、…ああ…ッ」
ゆっくりと押し当てて。
どんな顔、してんのか、仰ぎ見てやる。
眉を強く寄せて、下唇を噛み、震え…
声を漏らすたびに、その口を微かに解放して。

「イイ?」

俺の問いに、少しだけ目を開く。

それって、肯定だろ?ウン、ってことだろ?

俺の手の中にある物体。
俗称バイブレーター。
ついつい、目に付いたから、ついつい、手にして買っちまってたり。
コレするためにお買い物、ってのも、馬鹿みてぇだけどさ。
所詮、セックスなんて馬鹿みてぇなモンなんだよ。
楽しんだもん勝ち。そう思わねぇ?
俺は、そう思うぜ。



楽しめなきゃ、やってもしょうがねぇ。




「…それには同感するが、だからといって、コレをこうしてマザマザと見せ付けられると、どうもなー」
小一時間前。
お前にどうしても見せたいもんがあるから、って俺がニッコーって笑ってやったら、突然逃げ出したヒィッツを投げ縄投法で捕まえて

「見せたいもんがあるんだよ!」
「見たくない!どうせ私が嫌がるものだろ?!」
「いやがンねぇよ、寧ろ泣いて喜ぶ」
「…?なんだそれは」
と、最終的には、素直に俺の部屋についてきて。
ま、泣いて喜ぶっつても意味が違うんだけどな。
部屋に入ってきたヒィッツに、パカーンと箱を開けて見せると、
硬直したまま動かなくなったんで。
テーブルまで運んで、椅子に座らせて、
後頭部をパシーンって殴ってやったらスイッチが入った。
「…なんてもんを見せるんだお前は〜〜〜」
「でもよ、本物ってそうそう見なくねぇ?」
「…ん、ああ、そうだな、そういわれてみりゃ確かに」
と、箱の中、目を移して、まじまじ。
「…男性を模した形だって言うがなぁ〜」
「俺の○○○にはこんなボコボコついてねーぜ」
「ついてたら病気だろ」
「っはっは、どんな病気だよ!」
「いぼ?」
「いぼ?」
「いぼちん?」

テーブルに突っ伏して、約数十秒、息を切らして顔を上げる。

「なんだそりゃ!」
「い、いや、つい、今のは言葉のあやだ、忘れろ」
「最高!やべぇ、ツボった!これからつかお。頭にメモー」
「忘れていいッて、忘れろよ〜なんか私が馬鹿みたいじゃないか」
「え?何言ってんの馬鹿だろ?」
「…お前にだけは言われたくない」

しかし、茶飲み話のネタってのが、コレってのもねぇ。
でもよ、本当に良く考えてあるよな。
でもなんでよ、色とかピンクとか白とかなわけよ。

「なんでだろうな?」
「肌色の方が、ッぽいのになぁ」
「オモチャ感覚で、お気軽にって、そういう含みがあるのかもしれないぞ」
「お、ヒィッツ頭いい!そうか、オモチャ感覚な、そういうの俺分かるぜ。」

例えばよ、なんかやけに、コレが生々しい形過ぎて、生々しい見た目だったりとかしたら、
なんか、使うのに抵抗ある、とか、そういうヤツいそうだモンな。
ヒィッツ、イイ線突くじゃん。
思いつかねぇで昨日一晩テレビ見ながら飯食いながら悩んだ俺がバカミテェなくらい。
何でお前にわかって俺にわかんねーの?

…あーーー

もしかしてぇ。

なる。

なーる。

なーーーーるほど。


「お前こういうの使うの抵抗あるほうだろ!」


「にゃ、にゃ、にを、」


驚いたときの猫語キターー!!!
ホレ、やっぱビンゴだ。
「持ってみ、持ってみ」
「や、いやだ、変なものを持たせるな!」
「へー、ジャやっぱ抵抗あるんだ?」
「…ふ、普通あるだろ?」
「俺ねぇよ?」
「え?」
「ねぇっつってんだよ」
「ウソだろ?」
「本当だよしつけーな。犯すぞ。お、そうだな、いいな、ンじゃ、慣れろよ、たいしたことねぇから」






それを箱から取り出して、
手に持った感触、なんか微妙な柔らかさ。
コレも、多分、作ったやつは、一生ケンメー作ったんだ。
使ったときに痛くねーようにとかさ。
使ったとき、気持ちよくなれるようにとかさ。
下手すりゃァ自分で試して、もっとこういう形のほうがイイとか、もっとこういう動きのほうがイイとか、そりゃもう一生懸命…

…女相手に試行錯誤してる男みたいだな。

セックスする時ってよ。
相手を感じさせようと思ってメッチャクッチャ一生懸命になるんだよな。
此処はどうかな、とか、こっちだったらどうかな、とか。
はずしたら、結構ショックでさ、でも、次を攻めないと、気持ちよくしてやれねぇから、次を探して。

…俺、

ヒィッツにそうやってたことあったっけな…

あったような気もすッけど

「なぁ、お前さー」
「…それをこっちに向けるな!」
「お前さ、乳首弱いじゃん?」
「!」
「ンで、首…弱いじゃん?」
「!!」
「耳も、舐めたらビクビクしてたよなぁ」
「!!!!」
「でも後ろだけでもイケるじゃん?」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

それってナンデナノ?
普通、全部感じたり、って無いだろ?
此処は気持ちいいけど、此処は特にそれほどでもない、ってのが普通じゃねぇ?
実際、俺、耳とかあんまり

ヒィッツ?


ハタと気がついて、ヤツを見たら。
真っ赤な顔して、息切らしてて。
俺を見てて。
俺の言葉に、


欲情してた。



…いいなァ、やっぱお前。



「しよっか。」
「…そんなつもりで来たんじゃなかったのに…くそぅ」
「衝動は突然のもんだろがよ。”思ったときがヤリ時”。な、ことわざにもあるじゃん」



ありません。



俺は、目の前で手にした機械に舌を這わせて見せて。
お前は俺に向かって、ゾクッとした顔、して見せて。
挑発、しあう、もう、単なるケダモノ。


近寄って、舌先からの口付け。
キスってのは、唇でするもんじゃねぇ。
舌で相手のクチン中を犯すモンだ。
抜き差しを繰り返して、唾液でドロドロになった唇をあわせて、それがフィニッシュ。だろ。

「っは、ぁ」
「…ふ」


聞こえるのは荒い吐息だけ。
そっと吐き出される息が、時に引き攣って、その高ぶり具合を教えてる。

ブツはテーブルに置いて。
マフラーをグイ、と外すしぐさをして見せると、俺が外すよりも先に、自分のネクタイ引き捨てて。
…煽るねぇ。お前。

椅子の背もたれに掛けた服。

あん中に入ってたお前の身体。

「足、開けよ」
「…私ばっかりだな」
「ンじゃ俺も開くから、触ってみ」

無言で、其処に座り込んで。
足を開いて絡めた。
俺の顔見て。其処見て。
手を伸ばして。

「っ」
「スマン、痛いか?」
「タマンねぇ」
手を伸ばせば、テーブルのアレに手が届く。
「…あ、」
と、何かに気がついたフリして俺が右を振り向くと、釣られて振り向いた。

へへ、その瞬間に俺はそれゲットしてて。
ついでにスイッチオン☆

「?!な、なに!」
「使ったらぁ」
「…ひ、卑猥だ」

確かに、卑猥な動きだよなぁ。
でも、俺たちも十分卑猥だろ。

な、
コレでお前、犯してやるよ。

「…ウソ?」
「マジ」

とか言いながら、抵抗しねぇンだよな。
開いた足の間に、動くそれを押し込んで、根元にそって這わせてやる。

「っ!ん!んっ、や、やめ、やだっ」
「なんで?」
「あ、ああっ、や、駄目だっ、て、そんなン、で」

でも、お前ビンビンだよ?

「だってぇ、そんなんで感じたら、私が、オモチャみたいじゃ、無いかぁ!」
「でも気持ちいいだろ、いいんだよ、オモチャなんだよお前は」
「そん、な、あ、やっ、」

振動、全部感じてる?
先端ぐしょぬれじゃん。どうしたんだよ、こんなにして。
こんなんなっちまって。
身体、反ってく。浮き上がる腹筋、俺自身に添えたままの指が、痙攣してて、お前本当にオモチャみてえ。

「あっ、あ…!!!!」
「いいんだよ、オモチャでさぁ。俺もオモチャだろ、お前の。遊べよ、俺の身体で。俺はお前の身体、面白くてタマンねぇンだから」
「…っふ、だ、だって、そんな」
「オモチャんなっちまえよ。」

そのまま、それを滑らせて。
後ろの穴に、ゆっくりと差し込んでやる。
抜き差しを繰り返していくと、だんだんとそれを飲み込んで。

「い、やだぁあああああ!!!…っ、ぐ、う、うっ」
「嫌じゃねぇだろ、もっとって言いてぇくせに嘘つくんじゃねぇ!」

思い切り捻じ込んだ。
悲鳴と、空中を掴む指と。
引き攣って俺の腿を引っ掻く足指。
言えよ。
俺だけじゃ、満たせねぇ気がしてたんだ。
もっと良くしてえんだよ、お前を。
どんな理屈も、もう関係ねぇ。

なぁ、

俺なんだよ。
何使おうと、俺なんだよ、お前抱いてんの。
俺なんだよ。

俺が抱いてんだよ。

入れられるもんなら、このまま、お前ン中、俺のこんなに固くなってるもんぶち込みてぇくらいなんだよ。

「イキたくない、それじゃヤダ、嫌、だ、お前のでイキたいいっ」






ば、ばぁか

ばか、


と、



「当然だろ!」



こんなもん、おまけだよオモチャだよ。当然だろ。
やっぱ俺のほうがイイ?
いいんだろ。
すんげぇ嬉しい、駄目だ俺。馬鹿だ俺。



オモチャはオモチャ、添え物。
俺の、入った感触、ほら、味わえよ。
オモチャは添えモンで、お前の弱いとこ、順番になぞって、ってのもイイだろ。
強く
もっと強く
叩きつけてやる。
俺の芯にまで絡みついて来る内壁が、お前の欲情全部俺に伝えて、




あー、




お前ン中、全部、ぶちまけてやりてぇ、俺の、全部…!!!















よんよんよんよん。
無駄に動いてるそれを目の前にして、ふぅ、とタメイキ。
変な動き方。
こんな動き方、絶対無理だって。
横にゃうごかねぇよ馬鹿。
振動もしねぇよ馬鹿。
バイブレーターって、男のモン模(かたど)ってるけど、まったく別のものだよな。

隣でうつ伏せになってたヒィッツが顔を上げてバイブレーターを一つ叩く。

「そんな動き出来るかっ!」

…バイブに突っ込み入れんなよ(笑)

「私もお前もオモチャだとお前言ったよなー。」

ああ、そういやそんなコト言ったな。

「私はお前をオモチャだと思ったことはない、私をオモチャだなんて、ふざけるのもいい加減に」

ゴン

「しろっ!!!」
「いってぇ!!!」
「誰がオモチャだ!」
「お前だ!」
「ンじゃお前もだ!」
「さっき違うって言ったじゃねぇか!」
「前言撤回だ、お前はオモチャだ、いやそれ以下だ、畜生以下だミトコンドリアだ!」
「ムキー殺すー!!!」



あーあー。
ヒィッツの髪引っ張りながら。
なんだよ、せっかくイーカンジにセックスしてたってのに。
なんだよ。
ったく、ぜんぜん気にしてねぇじゃんコイツ。



でも、楽しいよな。やべーくらい。
しかもセックスまで楽しい関係って、どうよ。




憧れだろ?




…そうそう真似、出来ねぇだろ。へーん。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
コメント

憧れるなぁ。確かに。