と、言うわけで。
一夜明けて今日は隼人先生とランニング!

違。

初詣。

いいのかしらん。PTAとかに見つかったら
不純異性交遊とかで摘発されないかしら。
学校の校門前に、私ったら30分も前に着いちゃって…。
まいったなぁ、絶対待つのわかってるのに。
隠れておいて、先生来てから、来たフリしようかな?
そうだ、そうしよ。
校門の中に入って塀の内側に隠れて。
遅刻したら怒っちゃうぞ。

…隼人先生ってさ。
好きな人、いるんだろうな、って。
思うの。
わかるわよね、アレだけはっきり挙動に出されればそりゃぁ誰だって。

はぁ。

塀に寄りかかって。
…冷たいな。
背中。
頭に浮かぶのは、笑ってる隼人先生ばっかり。
何で、あんな顔で笑えるのかしら。
元気よね。
ドキドキするくらい。

たしたしたしたし。
え?
たし?
何の、音…

「委員長!もう来てたのかー」
とは。
隼人先生談。
校庭ランニングしてやがる!

「な、何やってるんですか」
「ジョギングの場所ここに変えたんだ、っと、ふぅ、おはよう」
「おはようゴザイマス」
「待ち合わせに遅れるのは教師として、なぁ」
なぁ、まぁ、そう言われてみればそうだわね。
しかし、何で走ってるのよぅ。
朝から早々にいい顔しちゃって。

校庭をくるっと回って、私の前に戻ってきた隼人先生は、
とんとん、とその場で軽く足踏みをしてる。
「先生、本当に走っていくんですか?」
「っていうか、委員長。」
「はい?」
「ほかに誰も来ないのか?」
「はい」

呼んでないもの。

先生は足踏みをやめて、ちょっと困った顔して。
やっぱり、個人的に生徒と何か関係しちゃいけないのかしら、教師って。

「そりゃさみしいなぁ」
「…でも」
「ん?」
「あ、あの、そう、私先生にだけ相談があって!」
「相談?…俺に?」

…隼人先生、そこで輝かないでください。
生徒が悩んでるの知って輝く先生がいますか。
相談されるのがうれしいのね。
…そりゃ、相談したいことも聞きたい事もしたい事も沢山あるんだけど。

私の相談、と聞いて、
個人同士の付き合いなんて気にしなくなっちゃった先生は、
車まで出してくれて。
驚いた…結構いい車。
教師って貧乏だとばかり思ってたわ…
太陽高校が特別に給料でもいいのかしら。

校長に身売りでもしたのかしら。
いやいや、関係ないって。
イヤンでも。
 「隼人先生。君は生徒に体罰を科しているそうじゃないか」
 「校長!しかし教師には生徒を教育する義務が…」
 「ならば校長には教師を教育する義務がありそうだ」
 「え?」
 「生徒の気持ちを知るべきだとは思わないかね。
  そうだ、君にも体罰を科してやろう」
 「体罰、って…あ、何をするんですか…校長…っ!?」

とか言って。
うわあお。
「どうした委員長?顔が赤いぞ風邪か?」
「い、いいえ!」
にこー。
危ない危ない。
本人の目の前で本人を蹂躙するところだったわ。
校長、体格いいからなぁ熊かライオンみたいだしたぶんアッチも
「委員長?」
「ス、スミマセン!」
「ははは、どうしたんだ突然謝って」
「あ、いいえ…」
うつむいて。
馬鹿だわ私。
馬鹿バカバカ。
ゴメンナサイ先生、だっていつも私そうやって、考えて自分で…

「な、なんでもないんです」
にこ。
信号待ちで止まった車、
先生の手の平が私の額に
「…!」
「熱はねぇなあ」
ひょい、とはずされて。
私のおでこ、なんだかあったかいよ。
馬鹿みたい、私。
ドキドキ、させないでよぅ…
「あの」
きゅる。
私が言葉を言いかけたとたんに、車は発進して。
私の声、小さくて、聞き取ってもらえなかった。

いつ言ったらいいんだろう。
言って、どうにかなるものなの?

何で私、隼人先生好きなんだろう。
先生の車乗って。
一緒にどこか行けるなんて、
それだけでいいじゃない。
駄目よ、言っちゃ。
たぶん、隼人先生、困っちゃうから…

言えないわよ…

だって、先生は響子先生が好きなんだから。