…セヨト声ガスル

 
破壊セヨ、ト声ガスル

何を?


承知の上でしょう?

でも……ないから

何が?

ない、から…私には。


ナイフを拾った
ポケットに忍ばせて
拾ったのか自分で買ったのかもう忘れるくらい前の話
でも拾った
そう思わないと。
自分で買っただなんて、そんな自分は怖い人間じゃない
恐らく拾ったから、ただ持っていた。
それだけの話なんだ…と言い聞かせなければ。

誰に?
最後の言い訳の為に?
いいえ、恐怖を誤魔化すが為に。

ポケットにナイフがある。
それだけでもワクワクした。
自分は強いんだ
なぜかそう思えて、行きすぎる人を胸を張って見ていた。

  

  それはずっとここにあった欲求であり


     そうなったから始まった物ではない筈


        そう、しろがねになる前からずっと知っていた


            そう!そう!ずっと!ずっと思っていた!


                誰かを……殺してやりたい!憎い!




使命・生きている価値



                ずっと思っていたからでもそれは誰にも言わない


             人間が表に出して良い感情ではないから


         しろがねになってはじめて許された感情


      憎み、そして殺意を抱き、それを消すことに執着する単なる本能


   許されたから醜く変貌する怪物になり人間を自ら捨てる



ずっとここに
あったなんて
認められる
ワケがない

だろ
だって

ナイフで傷をつけたい
人を殺して
しかしそうしたら罰せられるし人は痛がる、寂しい、
しかし怖がられるなら消してしまえば良い
それをギリギリの所でなんとか繋ぎとめ
何故かその時自分は人間なんだなと強く感じた
幾ら怖くても殺してはいけない
何故、殺してはいけないの?
共存
故?
信仰、共生、愛、繋がり、心
見えない物を保つ為に懸命に殺意をこらえる子供たち
壊しても良いよと解き放たれ
そうしたら楽しそうに殺戮をはじめる。
痛がる人を見て恐ろしくなる、何故ならそれは自分と同じ生き物であってその痛みがわかるから
同じで無いなら恐らくは

痛みを感じない
そうなれば恐らくは自分は

痛みを知らない人間よりは
感じないほうがまだましと言い聞かせて
扉を叩いた
ナイフをポケットに忍ばせたまんま
あの時の自分は引きずったまんま


すべて生まれ変わって
ナイフを身体中に秘め
そしてナイフを手放せない身体になる


いつか捨てようと思っていたのに
捨てようと思っていたのに


   ……スバラシイダロウ?コノカラダ



罪悪感を捨てよう
すべてに理由をつけて


捨てて


…もう、いらない。自分さえも


守るものを見落として
このまま卑下されつづければ良い
それでいい
それでいい
それで


破壊セヨ、ト声ガスル…



見失いたくは無いと
サヨウナラ
サヨウナラ
サヨウナラ
用意してある言葉はそれだけ
サヨウナラ
後は最後に向かって走るだけ
サヨウナラ


サヨウナラ



ナイフは脆く崩れ去り
それを捨てる切っ掛けを提示され
しかし私はそのナイフにすがりついた。
自らの手をカラダを裂きながらソレを抱いた


もうナイフなしでは生きられない
怖くて
怖くて、生きられない



サヨウナラ大嫌いな自分
そして新しい自分の用意などは無い


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