続・ご近所ジョジョ物語
ホルホース編・第3話「苦悩」

                       

遠くから、ギャ−ギャ−と声がする。
何か、大きな声で怒鳴っている男の声。
病院内は静かなのが基本だと思っていたホルホースは、顔をしかめてそっちを見た。
背の高い男が、看護婦相手に駄々をこねている。



 ????:だぁかぁらぁ!俺はこんなとこでゆっくりしてる場合じゃねぇの!
看護婦サン:何言ってんの!かってに骨折って運び込まれたのはあんたでしょ〜?
 ????:ああ、もぉ〜ちょっとでイイから、外出許可してよぉ
看護婦サン:駄目ですよ〜だって昨日骨の手術したばかりじゃないのよ
 ????:だって、俺、このままじゃいらんねぇよ〜!なぁ〜頼むってばよぉ


その声に、飛びあがって反応するボインゴ。
この反応は、まさか…
頭に手をやって、ため息をつく。
ため息の理由は、ボインゴが叫んだ言葉。


 ボインゴ:あああああ!にいちゃん〜〜〜!!!
ホルホース:また、ああ言うのか…変なのに関わっちゃったねぇ
 ボインゴ:ホルホースさん、本当ににいちゃんです!凄い!見つかりました!凄い!
ホルホース:はいはい、俺は貰うもの貰えばそれでいいのよ〜
 


と、その兄ちゃんのほうを見ると、ボインゴを見つけて、逃げようとしている。


ホルホース:っと?これはどう言う…
 ボインゴ:ああ!にいちゃん?!


看護婦さんを押しのけて、逃げだす。


ホルホース:なんなんだよ、一体!とめちゃってイイのかな、これは…。
 ボインゴ:にいちゃああん
ホルホース:しょうがねぇなぁ…


横をむいたまま、知らぬ振りをしてスタンドをその兄ちゃんに向けて放つ。
ドギューン!
凄い音が病院内に響く。
当然、ボインゴにはその音が聞こえる。
驚愕して、ホルホースを見やるボインゴ。
当の兄ちゃんも振りかえったところを見ると、スタンド使いだろう。
あさっての方向を向いたまま、舌を出す。
ホルホースの銃弾が、にいちゃんの足元に炸裂する!


 ????:ひゃ!ひゃああああ!


そう叫んで腰を抜かす。
そのそばに、ボインゴが駆け寄る。


 ボインゴ:大丈夫?!オインゴにいちゃん?!
 オインゴ:お前、なんでここが…って言うか、なんだあいつ!?
 ボインゴ:探偵さんです、兄ちゃんを探してもらってて…
      ごめんなさいにいちゃん、寂しかったんだよぉ
 オインゴ:探偵!?
ホルホース:そ。ギャラは貰うよぉ〜ん
 オインゴ:あ〜!なんでここが〜くそ〜くそ〜!ばれちまった!
ホルホース:なんだい、ばれちゃまずかったのか?
 オインゴ:……
ホルホース:俺は探偵やってるホルホースってもんだ。
      首を突っ込むようだが、責任感がなさすぎるんじゃねぇのか?
 オインゴ:なんだと?俺達兄弟のことはほっといてくれよ。あんたには関係ないだろう
 ボインゴ:にいちゃん、そんな…
 オインゴ:俺は黙っていたかった理由があるんだ!それなのに…
ホルホース:理由とは
 オインゴ:別に…


そう言って、下を向いてしまうオインゴ。


 ボインゴ:にいちゃん、大丈夫なの?足…


包帯でぐるぐる巻きになっている足。
そして、腕。


 ボインゴ:骨、折れてるのって、ほ、本当?
 オインゴ:お前には…心配かけたくなかった…のに…
ホルホース:いわねぇほうがなんぼか心配だよな〜
 ボインゴ:にいちゃん、僕はそんなに頼りないですかぁああ〜うおお〜ん
ホルホース:また泣く…
 オインゴ:ああ!ボインゴすまない!俺がふがいないばっかりに…
ホルホース:……優しさごっこか…
 オインゴ:なに?!
ホルホース:さぁね
 オインゴ:てめぇ、聞き捨てならねぇ!ごっこか!?俺達兄弟愛は、ごっこか!


痛む足で立ちあがり、ホルホースの胸倉をつかむ。
よろめくオインゴを支えてやりながら、ホルホースが言う。


ホルホース:その愛の理由が自分にあるのか、相手にあるのか…
 オインゴ:自分か、相手か…?だと?
ホルホース:いいさ、俺には関係ないことだろう
 オインゴ:あんたから見て…おれたちは、優しさごっこか?
ホルホース:必要なときにだけいればイイ存在。そう言う風に見える
 オインゴ:そんなはずは、無い!俺はボインゴが大切だし!
ホルホース:誰のために大切なんだ?
 オインゴ:え?
ホルホース:いいや。まだ分からない方がイイのかもな
      …すまない、余計な口出しだったかもしれん
 オインゴ:俺が、自分の理由だけの為に、ボインゴを大切にしている、と?
ホルホース:いや、もう考えない方がイイ。わるかったよ
 オインゴ:そうかも…知れない…けど…俺はどうしたらイイか分からなかった。
ホルホース:やめとけ、多分そのうち自然と理解するさ。
 


そう言って、肩に手を置く。
その手はとても重く感じられた。
オインゴは、その場に座り込む。
ボインゴの心配は、俺の肩に乗っかっている。
それが、重い。


 ボインゴ:にいちゃん…
 オインゴ:すまない…俺は…
ホルホース:考えるな、今考えると多分あんたは大切なものを捨てちまう
 オインゴ:大切なもの?
ホルホース:勝手なことを言ってすまなかった。
      今お前が考えようとしていること…それは…
      自分自身を信じられるようになってから、考えなければならない。
      そう俺は思う。
 オインゴ:俺は、どうしたら、強くなれるとおもう?
ホルホース:強くなることで得られるのが自信だと?
 オインゴ:……。ケンカで負けたことなんてなかったんだ。
ホルホース:へェ
 オインゴ:なのに…俺は…
ホルホース:負けて、この有様ってか?
 オインゴ:情けねぇ…だからボインゴには知られたくなかった。
      俺が弱いなんてこと、知られたくなかったのに。
ホルホース:なるほどね。あんたは、力で人を守る…そう言う考えか。
 オインゴ:間違っているか?
ホルホース:いいや、間違ってることなんか、この世に存在しない。
      あるのは、真実と、どうにもならない孤独感だけさ


そう言って笑う。
オインゴは、その笑みに突き刺されたようになっていた。
この男は、強い…
俺よりも…


 オインゴ:弟子にしてくれ!
ホルホース:はぁぁぁぁ?!?!?!??!
 ボインゴ:にいちゃん!?
 オインゴ:俺、あんたみたいになりたい!がんばる!弟子にしてくれ!
ホルホース:な…な…。なんて…。
 オインゴ:頼むうううう
ホルホース:なんて…


なんて、単純な奴なんだ……。
あまりのことに、大笑いする。
面白いことになりそうだ、また。
俺は、また、なにかを探し始める…人の苦悩を通じて。

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