続・ご近所ジョジョ物語
ラバーソール編・第2話「C(P)」

                       

ラバーソール:ち、なんだよ…


店の前に立って、舌打ちする。
小さな看板に、CLOSEと書かれている。


ラバーソール:昼間ッからやってるハズだって聞いたんだけどなあ…


そう言ってノブに手をかけてみる。


ラバーソール:あ?


ギイ。かすかな音を立ててノブが動いた。
恐る恐る中を覗いてみる。
誰もいないようだ。真っ暗な中、うすらぼんやりと、
テーブルが散乱しているのが見える。
少し、店内があれているように見えた。


ラバーソール:いるのか?J・ガイル??


音もしない。耳をそばだててみるが、何一つ動かないようだった。


ラバーソール:…無用心だな…おーい


奥にもう1つ扉があるのを見つけ、少し中にはいる。
ギィン!!!


ラバーソール:に゛ゃあああ!!?


ズガン!!鋭い音を立てて、奥の方から何かが飛んできた。
慌ててしゃがむと、頭の上を矢のような物が飛んで行く。


ラバーソール:な、何たるセキュリティシステム…。入るモノ皆殺しかよ…ひゃああ


かなわねぇや、とばかりに店を出る。
J・ガイルここにはいないようだった。
仕方なく、J・ガイルと一番関係が深かったようなデーボの所へ向かってみる。
名刺の裏に書いてもらった住所を頼りに、車を走らせる。
閑静な住宅街。区画整理されたその土地の中心あたりにその家はあった。
表に大きなバイクが置いてある。


ラバーソール:見たことのあるバイクだな…
       ハーレーのメタリックグレーなんて乗ってるヤツはあんまりいねぇよな…


一人ごちながら、車を下りてチャイムを押す。
可愛い音楽のチャイムが鳴る。
デーボの家だよな?と首をかしげてもう一度表札を確かめてみたり。
ややあって、扉がいぶかしげに開いた。


 ポルナレフ:ああああああああああ!?
   デーボ:な、なんだ?


見たことがあるバイクのはずだ!俺が売ったやつだもん!
昔、高校時代のころに俺が乗ってたバイクをこいつが欲しがって、いや、そんなことより!


ラバーソール:なんでポルナレフ!?
   デーボ:お前ら、知り合いか
ラバーソール:っていうか、幼馴染だ…全く、なんて偶然だよ
 ポルナレフ:てめーデーボの知りあいだったのか?!


オイオイ、それを言いたいのはこっちだぜまったく。


ラバーソール:まあな。って、なんかあったのか、二人そろって出てくるなんて…
   デーボ:……いや…
 ポルナレフ:音羽さんがさらわれたんだ


一瞬耳を疑った。
冗談にしちゃハゲしすぎる。


ラバーソール:は!?マジかよ、鈴ちゃん、いネェの!?
   デーボ:……


デーボがまたうつむいている。
こいつはよくこう言う顔をする。寂しそうな、やりきれないような。
その気もちは俺には理解出来た事がない。
出来ない自分の経験のなさを感じたりする。


ラバーソール:またなんかに巻き込まれたか。
   デーボ:俺の責任だ
ラバーソール:相変わらずそういうこと言ってんだな。
   デーボ:…お前はなんの用だ
ラバーソール:いや、J・ガイル捜してたんだけど…
       いねぇから、お前ならなんか知ってるかなと思って


俺がそう言ったとたんに、二人が同時に掴みかかってきた!
これは怖い!!
さすがの俺もかなりびびッた。


ポル&デーボ:何イイイイイ!?J・ガイルだぁ?!


マジで逃げようかと思った。この二人の形相は迫力があるなんてもんじゃない!!


ラバーソール:な、なな、なんだよ!?
 ポルナレフ:そのJ・ガイルが!
   デーボ:鈴さんを…!!!!!


俺はまた耳を疑った。今日は耳を疑いっぱなしだ。
J・ガイルは俺に手紙をよこした、そして店から姿を消した。
鈴さんと、DIOと、ホルホースが関係あるのか?もうなにがなんだか。
つい素っ頓狂な声をあげる。


ラバーソール:!?マジェェ!?なんでなんで?!ちょっとどういうことだよ
 ポルナレフ:なんでJ・ガイル捜してんだよ?
ラバーソール:なんか突然よ、俺のトコに手紙が来て…ほら、これ
 

J・ガイルからの手紙をちらりと見せてやる。
引ったくりそうな勢いで、二人が覗きこんだ。


      頼む、DIOを、ホルホースから守ってくれ。


全員で首を傾げるばかりだった。
J・ガイルをなんとしても見つけ、そして聞き出さなければ理解できない。
しかしこの状況だと、J・ガイルがどこかに隠れている…
それを見つけて聞き出すのが先か、DIOがホルホースに狙われるのが先か…


俺は早々にデーボの家をあとにした。
携帯の呼び出し音が長く響く。
車を走らせながら、イライラしてくる。


ラバーソール:くっそー使えないやつばっかだなもう!
   DIO:「使えなくて悪かったな」


携帯越しに、不機嫌そうな声が伝わってくる。


ラバーソール:うお!出てたのか!
       出たなら出たって言えよびっくりすんなもう〜!
   DIO:「用はそれだけか?」
ラバーソール:聞きてえ事があるんだ。
   DIO:「なんだ?」


あくびまじりの声。
まだ寝てたのか…
苦笑いしながら、狙われてるはずの標的さんのあくびを聞く。


ラバーソール:オマエさ、ホルホースとなんかあった?
   DIO:「なに?ホルホースがどうかしたのか」
ラバーソール:おまえ狙ってるらしいんだけど
   DIO:「ハン、知ったことではない。
       それにホルホースとはここ最近会ってもいないぞ。
       なにかの間違いだろう」
ラバーソール:そうだといいんだがな…
   DIO:「府に落ちない声だな」


車は住宅街を抜け、田んぼの広がる町はずれに来ていた。


ラバーソール:J・ガイルからな、手紙が来たんだ。
   DIO:「J・ガイル?」
ラバーソール:なんか思いあたらねぇか?
   DIO:「悪いがJ・ガイル本人に関してはなにも知らん。会ったこともない。」
ラバーソール:そうだよなぁ…。


俺はまた首をかしげる。
やはりJ・ガイル本人しか知らないことのようだった。
細い道に入り、車を止める。


ラバーソール:これからオマエのとこいくからさー。ちょっと手紙見てくれよ?
   DIO:「ついでに店までの足を頼もうか」
ラバーソール:まっかせてぇん


そう言って車を降り、携帯を切る。
勿論ココはDIOのアパートの前。
足利は以外と狭い。


ヴァニラアイスに連れられて、部屋に入る。
綺麗に片付いた部屋のちゃぶ台の前に、DIOが新聞を広げてすわっていた。


ラバーソール:おッさんじゃあるまいし…
   DIO:世の中の動きは絶対的に必要な情報だろう?
ラバーソール:とかいいながら、目が四コマ見てんぞ
   DIO:情報だ。
ラバーソール:そんなもんよりこっち見てくれよ


そう言って俺が手紙を広げると、胡散臭そうにDIOとヴァニラアイスが覗きこんだ。


ヴァニラアイス:ホルホースからDIO様を守ってくれ、と?
 ラバーソール:ああ、J・ガイルかららしい。
    DIO:まったくワケがわからんな…
ヴァニラアイス:気にしないほうがいいんじゃないですか?
        J・ガイルってヤバイヤツでしょ?
 ラバーソール:まあそう言えばそうだよな…殺しの手引きしてたやつだし…
ヴァニラアイス:悪戯かなんかじゃ無いですか?またなんか企んでんですよ絶対!
    DIO:その可能性は高いな。
        人は生きるために人を欺く、これは歴史的に繰り返されて来たことだ。
 ラバーソール:まあ確かにそうなんだけどよ…でも俺こう言うのほっとけネエよ…
ヴァニラアイス:信じるんですか、この手紙。
 ラバーソール:駄目かなー?
ヴァニラアイス:お人好しですよ、それって〜
    DIO:まあ好きにしたらイイだろう、決めるのはいつも自分自身、
        それは当たり前のことであり、不変のことだからな
 ラバーソール:いちいち言い方が難しいなァ。
        新聞ばっか読んでるから言葉が難しくなるんだよ
    DIO:四コマも読んでいるぞ
ヴァニラアイス:知性とギャグセンスを兼ね備えてるんですよね〜♪
 ラバーソール:妙なギャグセンスになりそうでおもしれえかもなー!


そんな会話の中、J・ガイルの手がかりは何一つつかめず。
笑い会ってお話しあって終わってしまった。
収穫まったくナッシング。参った…。
俺はお人好しだろうか?と、DIOを車で送りながら考えてみた。
DIOはそんな俺を見て、オマエはお人好しだろう、
何故なら私が助手席に乗っている、と言って笑った。
俺も笑った。
DIOは俺が笑うと、いつも面白そうに見ている。
そしていつも言う。よく笑うやつだ、と。
困った子供を見るような顔で言う。
そしてそんなお前が好きだと言って笑ってくれる。
人が笑ってくれる、だから俺は自分が笑うのが楽しいのかもしれない。


DIOを送り届け、車で少し道を戻った。
D・ダービーにはもう連絡してある。
俺ちょっと遅れるから。ごめんな、って。
理由を聞こうとしたD・ダービーの声を聞こえなかったフリをして、携帯を切った。
俺のスタンド、イエローテンパランスは、俺自身を変える。
虎の威を借る狐、そんな言葉が頭に一瞬よぎった。
虎を狩ろうとする狩猟者は、一体どんな恐怖をもって挑むんだろう。

俺は、狐のままで、虎のフリをする。


ついてこい…ホルホース。
狩ってみろ、この虎を、この狐を。
J・ガイルが駄目なら、お前に聞くまでさ…なァ。


俺は車を降り、駅前から店まで歩く。
牙をむいたまま。
虎の威を借る、俺は狐…



続ご近所TOP/NEXT