続・ご近所ジョジョ物語
ラバーソール編・第4話「C」

                       

ホルホースが何かぶつぶつと呟いているのが聞こえる。
なんでだろう、何をこいつは怖がっているんだろう。
俺は何でコイツに怖がられているんだろう?
俺は勝たなければならなかった。相手をあざけってでも。
勝ち負けなんて…一番こだわりたく無いのに。


ラバーソール:なんで怖がってんだよオマエ?


俺の問いかけに、ホルホースが凄い形相で顔を上げた。
食らいついてきそう…な…そんな、表情で。


 ホルホース:消えろ…
ラバーソール:なに?
 ホルホース:邪魔だ、消えろ…消えろ。
ラバーソール:なに言ってんだテメェ…


揺らぐ。一瞬だったが俺が揺らぐ。
否定、否定する?俺を否定するな。
俺は落ち着いたフリをして、困って見せる。


ラバーソール:オイオイ、落ちつけよ?


俺が笑う、するとこいつが目を伏せる。
俺の、笑いは、お前を傷つけるか。
俺はなんで笑いたかったんだ?
やっとのことで目を開けたホルホースの苦しそうな声が耳に届いた。


 ホルホース:そうやってよ…ごまかして寂しいやつだよなァ


ギクリとする。
何を、言い出す?こいつは。
俺が、寂しいだと?


ラバーソール:…なんだと?
 ホルホース:そうやって笑ってなきゃ自分をごまかせねぇんだろ?
ラバーソール:今度はやつあたりかよ。


ごまかしてなんかいねぇ、俺を傷つけるな。
俺をもうこれ以上苦しませないでくれ。
あの時だって、俺が笑っていたんだ、あのとき、
あの人が俺の目の前からいなくなった時だって!


 ホルホース:そうやって笑ってなきゃ、自分も守れやしねぇんだ
ラバーソール:……いい加減にしねぇと殺すぞ…。
 ホルホース:殺してみろよ!!どうせなにも出来やしねえ、
        どうせ笑ってごまかしてなんぼなんだろ?!


違う、違うはずだ、そんなことを言うな、
俺はなんで、こんなところで、俺はどうしてこんなヤツに
わ…分かってるのに!俺を否定しないで…!


ラバーソール:…てめぇ…!
 ホルホース:所詮…!テメェは「特別な人間」じゃねぇんだ!
ラバーソール:……!


俺の中で何かがはじけた。
俺は、特別じゃ、無い。分かってる知ってる。
もっと強く、なりたい
苦しい、笑えない。何かが…抜けてしまう。
俺は何も出来ない、何ももって無い。分かってるのに、だから一生懸命
だから、この身削ってでも…否定、するな、俺を否定するなァァあ!
ホルホースを睨み付ける、多分すさまじい顔で。
息が乱れる。
この程度で俺は乱れる。
俺は……弱い…俺は…
いつか誓った、あの気持ちまでもが壊れる、俺はそれを守れなくなってしまう
いやだ、いやだ、なんで俺を傷つけるんだ、
いやだ、俺を、否定しないで、寂しい、寂しいよ、助けて、助けて…!


俺の本能は、目の前のモノを消す衝動に駆られ、俺はそれに逆らえなかった。
傷つけるたびに俺が崩壊して行く。
音だけが聞こえる。何も見えない。認識も出来ない。


…疲れで俺の本能は攻撃をやめた。
つかれた、異常に。ぐったりした体、地面しか見えない目で捕らえたのは、
錯乱するコンクリートと、倒れているヤツラ、そして砕けた俺の…


行くあても無く、歩き出す。
もう、どこにも戻れない。居場所が無い…
俺が俺を受け入れられないのなら、誰も俺を受け入れやしないだろう。
俺は俺自身を自分と認められない、それどころか力が入らない。


一番怖かった。


公園の裏手の木に寄りかかってため息をつく。
息をしているのを確認するように。
そして始めて気がついた。



俺はもう…。笑えない



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