★三ツ時ニ闇ノ唐繰リ★
「……だ、誰…だよぉ……ッ」
そう、ただうわごとのように。
返って来る声に期待などできない、また恐怖に犯されるだけ。
クスクスクスクス。
耐え切れないような声で笑われる。
そして。
「悪かった…あんまり面白いんでな、調子に乗ったぜ」
「…!!ボンチュー…テメェ…」
こんな事されたってのに、怒りよりも先に安堵を感じたのは、しょうがねぇと思う。
もう、ボンチューは俺の其処に入れるつもりで突き刺そうとしてる。
これは、暴れてももう逆に痛いだけってこと?
「悪いな、とりあえず借りは返してもらうぜ」
「…あ、ちょ…ッ…!腕と目隠しくらい…っ!あッ…ん、んッ…!!!」
言葉の途中でゆっくりと入られて。
声がそのまま喘ぎになる。
「ホント、イイ声出すよな…聞いてて鳥肌が立つようだぜ…」
突き動かされて顔に草が触れる。
悲鳴を上げた口から、舌を突き出して喘ぐ。
と、止まらない。止められない。
信じられないほどの拷問みたいな快楽に。
「…あ、今の音なんだ?」
ドキッとした俺に、声を止めて。またそのまま強く突き上げられたり。
突然無言になってみたり。
そのたびに分かる。体の奥が、ボンチューのソレを咥えて強く締めつけてる。
「あ…も、もぉ、死にそう…いい加減…おわ、れ、よぉ…」
「…ッ、お前が、終わったら、な……」
ボンチューの喘ぎを聞いて、自分がもっと気持ちよくなる。
一人じゃ、どんなに感じても、怖くて飛びきれなかったんだ…。


土の冷たさを忘れて、
静けさにはじめて自分の汗の冷たさに気づく頃はもう夜の齢。
虫も泣かぬまだ寒い摂氏に肌が驚いて身震いをする。
「しかしまぁこんなに怖がるとはな、情けなくねぇのか?」
くだらない嘲りはもう聞き捨て。
コイツに怒ったところで、怖い物は怖い。
人の恐怖をバカにする奴にロクな奴はいないと
父親から聞いたことがあったように思った。
それを思い出して、こいつもロクな奴じゃないのか、と、
ひとりごちてボンチューを見る。
整った顔。しみったれたところのない表情。
風にふかれてチリリンと身震いする野良猫には、到底手の届かぬ代物と見る。

前に立って歩きだす姿に、ちょっと何かと似た雰囲気を感じて。
それが何なのか、誰なのか分かったけど、その気もちは伏せ置こう。

「あ…ッ痛ッ…」

身体の拘束を解かれて見た星空が
今までに見たものよりも明るくて、つい忘れて立ちあがった。
ズキンとしたのは駄々をこねる子供が引っ張る重さに似ていて。

「…?ぼたん?もしかして、お前、足…」
「うるせぇな、ほっとけよ」
「それでココに座りこんでたら、また幽霊に襲われるかもな」

今度は無表情にそう言って。
なんでこいつは突然表情を変えたのだろうと考えあぐねる俺に
すっと伸びた腕が、またヒョイと持ち上げて。
「お、おい!物みてぇに扱うんじゃねぇ!」
「人物と書いて物って字がつくだろ、人間だって物なんだ。」
「は?人物って、人と、物と、のことじゃ…」
「?」
一瞬空を見上げて表情も変えずに。
感動でもしたのかと黙りこむ俺に当たり前のように。
「知ってたよ。お前知らないと思ってた」

ば、バカにされすぎだ俺…。

担がれたまま、ボンチューの頭をポコポコと殴る。
こんな時だから、いいや、殴っとけ。
反応も示さずに俺を担いで道筋をたどり、今日の夜も御仕舞い。

「あの声にはビビったぜ」
俺もそろそろ素直に。
「あ?」
「皮膚を…とか、小さな声で言ったろが。小さい声でよ」
「あ?」
脳軟化でもしたのかと、頭を一つ殴って見ると、反応があった。
ケツを一つ叩かれる。
「イテッ!」
「俺は出してねぇぞそんな声。」
「えっ!?ええええ?!!」

突然大人しくなって震えがちな俺をなだめながらもう1度道筋。

舌を出すボンチューの顔が見えないのはこの夜のご愛嬌。

夜の戸張も閉じた頃。



見られた屈辱よりも、助けてもらったことの方が恥ずかしくて。
忘れろよって言ってみたけど。
「マミーにはいわねぇよ、安心しな」
だとさ。

まぁイイか。
アンタの笑顔みたッて言うことで十分俺は、
アンタの恥を知ったような気分だからな。

まー、ドッコイドッコイ、だよな。


って、ことにしとこう。




ん?
頬に感じたあの、
冷たい感触の主は、…………何?






〜『三ツ時ニ、闇ノ唐繰リ』終わり〜



なんだかイイ人チックなボンチュー。
二人ともそう言えば子供だったなと思って…。
酒も飲まずにシラフでするか?ボンチューが?と悩みつつ。
悩みつつ、「まァイイか脳細胞」が増殖して書き上げた物がコレ。

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