★御所車★
ゆぅらゆら。煙草の煙になりゃしゃんせ。
汝そろそろ詣でて行く時よのう。
白いところに自らを座して。
どこから手が差し伸べられるのかわからずに仰ぎ見て待つ、待つだけ。
煙になりたくは、ないと。
仰ぐ目が揺らいで。

揺らいで。

揺らいだ、瞳に、ふいに色が戻った。
目の端に映る黒髪と、
貴方に裏から抱きかかえられて座した背に、感じるのは肌の熱さ。
下の口で貴方を食らう、鬼子母神を己の下腹に見る。

「…あ…ッ…勝也…さ…ん?」

俺の発した言葉に返答がなくて。
答えの代わりに肩に歯を立てられる。
食いこむそれに悲鳴が漏れて。
耳元に、ク、と笑う音。
膝の裏に回った腕が俺の脚を持ち上げて、抱え上げる。
強い力。
腿の裏に回された指が爪を立て、引き裂かれるような痛みが筋になって残る。
赤く染まった貴方の指。
胸を掻き、首を掻き、狂ってしまえばそれも快楽…

「イテェか…?ボタン…」
「はァ…ッ…大、丈…夫、です…ッァアっ…」
「もっと、苦しめて良いって…ことだよなァ…?」

そうです、もっと、苦しめて下さい。
あなたの物だと刻みつけて、俺をココから離さないで。
こんな不安な日があって、あなたに壊して欲しくって。

「…なんで…オメェは…俺をこんなにしちまうんだよ…」

呟く声と、肩にかかった手の押し下げる力。
うつ伏せに床に押しつけられて、動物の姿勢で突き刺される。
強く入って来たものにもう激痛も感じない。
もう、俺の其処はあなたの専用の場所…
もっと埋め尽くして、烙印を…!

「俺がこうなっちまったのはオメェの所為だ!」

落ちたガラスの破片が背を切り裂く熱い感触。
強くそれを握った勝也さんの手からも赤いものが滴り落ちて。

「勝也…さん!手。手が…ッ」
「なんだ?俺に情けかけてるつもりか?こんな格好でか?!」

強く突き上げられて発した悲鳴が反響する。

「情け…なんかじゃぁ…ッああ…!」
「ああ?だったらなんだ?こんなところに呼んだのは誘う為だろう?」

酷く揺さぶられて、声が、出ない。
湿った肉の濡れた音と、時折高く吸われる息が辺りを占める。
コレが、俺の肉欲のすべて。
さぁ、もっと堕落させてください…
俺が自分を卑下しても辛くないくらいに。
堕落した自分が当たり前だと、弱い自分が当たり前だとあきらめられるように!

「なんで…なんでオメェはよぉ…ッ…馬鹿野郎…。」
「…勝、也…さん…?」
「コレ以上…お前傷つけたく…ねぇよぉ……
 逃げちまいやしないかと…それなのに…
 煽るなッ!…止まらなく…なっちまうじゃネェか…ッ」

俺は……。貴方をこんなかたちで傷つけて、怖がらせていた?
俺は、逃げるだけで貴方を見てなかった?

「違います、違います…、俺は、こう、されたいんです…ッ!」
「こんなされ方で辛くネェ訳がねえ!
 辛くさせる為にしている行為なんだ、
 お前を苦しめようとして俺はこうしてお前を…こう、して…」

ふいに片方の足が持ち上げられ、体を横に倒される。
握った脚を自分の肩にまで持ち上げて、
開かれた其処に貴方が深く出入りする。
突き上げられる体を片肘で支えて、漏れる息を手の平で覆う。
辛く、ないのに。
辛くなんか、ないのに…。

「もっと…して、下さい…ッ…」
「なんで、こんなものお前は欲しがるんだよ…ッ!?」
「つらく、ないから…ッ」
「ウソを、つけ…!」

開かれて曝されて。恥ずかしさが快感に注ぎこまれて更に息が上がる。
こんなに強く求められて、それを求めていた俺が、つらい訳が、ない…

「マミーのほうが、良いんだろうが…!」
「マミーさんは、違うッ!!あの人に恥を曝したくない…!」
「…は、俺には恥を曝しても良いッて言うのか?
 俺がしているコレは、恥か!お前の恥なんだな?!」
「あああっ……ッ…!!!」

駄目だ、伝わらないのか。
勝也さん、伝わって、下さい…。
どうしたら、分かって…?
苦しさに顔をそむけ、床に爪を立てた指に…指が触れた。

「恥、を、もっとさらしな…。」
「……ッ…」
「俺が、全部見てやるからよ…
 ココで全部俺がそれを吸ってやるからよ、怖がるんじゃねぇ」


……!
すべて、曝していいんですか?
俺は本当に壊れて、いいんですか?
貴方はそう言ってくださるんですか?

「その代わり、俺の恥をたっぷり食らってから果てるんだぜ?」
「…は、はい…ッ」

煙が掴めなかったのは、貴方が煙でなかったから。
俺を煙にして、貴方の煙で覆い尽くしてください…。
ココにいた俺を、貴方をすべて隠すように。
隠し事を、あの人に知られないように。


あの人の弱いところを隠せるのが誰なのか、知らないけれども。


すべて注いで…
貴方と俺がヒミツであれるように。
こんな恥、あったかくって誰にも教えてやれねぇですよ、ネェ…?


雪に想いを深草の…百夜(ももよ)も通う恋の闇…
君が情けの仮寝の床の…枕片敷く夜もすがら…?


とりわけ、待つ身に甘んじる事も、なかった訳ですねぇ…。はは。



(こめんと)
なんだか甘いッす、イケナイですこの展開。
なんですかカーボタでほのぼの?!
そんなことがあって良いのか!?(笑)良いか、可愛いし(よくない
今までずっとボタンの位置が掴めずに
曖昧なカップリングばっかり書いてきた自分に戒めのツモリで。

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