かなり長いこと嬲ってやったように思う。
すでに知性の失せた状態であることが見て取れるようだった。
冷たい床に倒れたまま動かない稲垣を、俺はそのままにしておいた。
邪魔なら、完膚なきまでに。
野獣会のメンバーに後を任せると俺は街に出た。
その後がどうなったのかまでは確認してない。
ただ、「SOULCREW」の「工藤優作」が
俺を血眼になって探しているらしいことだけが風の噂で伝わってきた。
別に逃げていたわけじゃない。たまたま会わなかっただけだ。
無論、俺はそんなこと気に求めていなかった。よくあることだ。

タバコを踏みにじったアスファルトに落ちた影が
工藤だということに気づくまで数秒かかった。
「黒澤ァ…!」
「あん?MADの犬か」
軽く台詞で煽ってやる。稲垣のお礼参りだということくらい分かっている。
ゆっくりと三節昆を構える工藤に、緩慢な動きで木刀を持ち上げる。
一振りすると風を斬る音が高く響いた。
「キタネェ野郎だとは思ってたけどよ、まさかここまでとは思わなかったぜ!」
「阿呆が。サカリ犬の飼い犬がほざくな」
「黒澤ァァァアッ!!」
工藤が棒状にした昆を下段から突き上げるようにして間合いを詰めてくる。
ぶら下げていた木刀を縦にしてそれをつき返す。
ジャラリという音がして、その昆が振り上げられるのが分かった。
音がすると共に大きくのけぞる。
分離した昆が目の前に振り上げられるのが見えた。
ふん、と鼻で笑ってその昆を木刀で払い飛ばす。
あっけなく三節昆は道路の上に乾いた音を立てて落ちた。俺はそっちを見ていた。
ひゅっと風を切る音がする。
とたん、顎が打ちあがる。工藤の拳が、もろに入ったらしい。
「っ…うお」
軽い脳震盪のような状態でよろめく。と、木刀の切っ先を掴まれたようだった。
予想できずに腹に自分の木刀を食らう。腹に走った激痛に顔をゆがめる。
嘲笑するような笑みを俺に向けて放った工藤は、痛みにかがみこんだ俺のこめかみに拳を振り下ろす。
一瞬意識が遠くへ飛ぶ。
なんとか意識を引き戻そうとする俺の霞んだ目にうつったのは
大きく振りまわされて打ち上げられる三節昆の赤い軌跡だった。



激痛が走って目を開く。
工藤の野郎の顔が真横にあった。俺が意識を取り戻したのを見て取ると、にやりと笑う。
「ここどこだと思う?黒澤さん」
後ろ手に縛られた腕が痛い。妙な浮遊感。
誰かの背中に担ぎ上げられているらしい、俺は。
乱雑なコンクリート張りの暗い部屋。見慣れた風景。
「俺の部屋じゃねえか…」
自分を担ぎ上げている奴を見極めようとするが、
縛られた腕がひねられて小さくもがくことしか出来ない。
そいつは俺をベッドの脇まで運んでくると、高い位置から俺を無造作に投げ捨てた。
「…!…グっ」
縛られた腕が自分の体重で軋む。
ミシリ、と音を立ててベッドの上に上がってきたのは工藤じゃない。
俺の体がまだ安定しないうちに、そいつはいとも簡単に俺を裏返しにした。


そいつの腕が俺の左腕を引き上げる。
うつぶせにして押しつぶされながら苦し紛れに開いた目が捉えたのは。
「……稲垣ぃ!?」
「当たりだ。」
稲垣の腕が縛り上げられた左腕の上腕を掴む。
片足で肩甲骨のあたりを踏みつけた稲垣に、意図を察する。
「マジかテメェ…!」
その後に口から出たのは、肩に走る激痛への絶叫だった。
骨をはずされた左腕が力なく落ちる。
痛みで一瞬朦朧とした俺の目の前に、工藤が何かを突き出した。
「コレ何?黒澤さん?」
「……俺の部屋を…漁るんじゃネェ」
「何だって聞いてんだよ」
工藤の手から稲垣がそれを受け取る。小さな錠剤が入ったケース。
はぁん、と、俺の後ろから稲垣が笑う声が聞こえた。
「女好きがたたったか?それとも自分で使うのが趣味か?黒澤?」
おもむろにベルトに手をかけ、いともたやすく引き剥がされる。
「丈、それやっぱアレ?」
「いいもん見っけたじゃネェか優作。俺を怒らせたんだ、そう簡単には楽にさせねぇ」


抜けた腕が衝撃のたびに激痛を与えてくる。
始めて感じる異物感と、引き裂かれるような痛みが下半身に集中する。
「…っぐああッ」
稲垣が仰向けにした体を容赦なく突き上げていく。
無理やり押し込まれた内壁を擦り上げられ、微かに悲鳴を上げる。
薬の効果なんてたいした事ないと思っていた。だがこの腕は、自由になる腕は、
力を与えてもマトモに稲垣を掴むことさえも出来ない。
こんな奴ら相手なら、余裕かましていられると思っていた。間違っていた。
そんな余裕は、とうに剥ぎ取られている。止めたくても止まらない醜態を情けなくさらけ出す。
シャツをはだけられ、その脇腹のあたりを工藤の指がさまよう。

「随分、よがってんじゃネェか?黒澤ぁ?」
動きを止めないまま、稲垣が俺の耳元で笑う。
稲垣の物よりも先に突っ込まれた薬は、ものの5分と立たずに俺に変貌を与えた。
稲垣が深く抜き差しするたびに、脳細胞が沸騰する。
もがくように掴んだシーツをかき乱すことくらいしか出来なかった。
「どうしたよ?いつものへらず口はねぇのか?」
「……っせ、ぇ…」
「まともに言えてネェぜ」
「…く、アッ!」
不意に工藤に乳首を掴まれて体がのけぞる。
髪を上げていたはずの布の帯はとうに落ち、長めの黒髪が視界を邪魔する。

「野獣が、聞いてあきれる」
どこをどうされても快感にしかならない。
何がどうなっているのか、何をどうされているのかだんだん分からなくなる。
ゆっくりと動きながら稲垣がたまに耳元で何かささやく。
慣れてきた其処が稲垣のソレに擦られて卑猥な音を立てる。
「男に犯されて喜んでるリーダーの姿ってのを、お前のチームの奴に見せてやりてぇよ」
「よ、ろこんでなんか、ねぇッ…」
「まだ足りねぇ?んじゃもっと深くしてやるぜ」
「ひぅ…、ァァッ」
「アハハハハハ喜んでんじゃねぇか!」
霞がかかったような黒澤の目を工藤が覗きこむ。
大笑いしながら乱暴にかき混ぜられ、引きつった顎が無防備に上がる。
言う事を聞かない腕でやっとのことで稲垣の体をとらえた瞬間、不意に体が軽くなった。
それと共に、ずるりと引き抜かれる。

体が、落ちる。ベッドの上に下半身を置いたまま。
冷たい床の感触が腕に当たる。少しだけ正気が戻った黒澤が顔をしかめた。
「…いながきぃ…こないだのアレで…いろいろ覚えたか」
「黒澤ァ!死ぬかテメェ!?」
ベッドに残した腰骨の上を、稲垣の腕が強く掴む。
力の入らない其処を無理に押し広げると予想もしない速さで、稲垣のソレが押し込まれた。
意思とは裏腹に、体がビクンと跳ねる。
「後ろから突っ込まれて気持ちイイかよ、この穴が」
「うッ…あああッ!」
いつどう来るのか見えない状況で犯される。
予想を裏切るように、何度もタイミングをずらされる。
入ってくるのを拒むようにきつく締めた其処が疲れで緩んだ瞬間に押し入ってくる。
何度も。気が抜けそうになる瞬間を狙って突き回される。
「あ、ぐっ…ふ、ふぅぅっ」
自分の漏らした声が、抗うものだけでないことに意識の片隅で気づく。

ずり落ちた体を工藤が持ち上げたのが分かった。必然的に稲垣の上に座る形になる。
意地悪く、稲垣が外れた腕を掴んで引き寄せた。
「ぎ、ひぃぃッ!」
上げたくもない悲鳴が口の端から漏れる。快感と苦痛。
入り混じった感覚が脳みそをしびれさせる。
「黒澤さん、悪いね、俺も入るぜ」
「…く、ど…おッ…や、ぅぅぅうぐっ!」
稲垣のソレで押し広げられている其処に、工藤が無理やりねじ込む。
ぶち切れそうな感覚。のけぞる俺の体を稲垣が押さえた。
横から俺の顔を覗きこむ稲垣は、唇の端を終始上げていた。
「大丈夫?苦しいか?」
工藤が別に心配でもないといったように声をかけてくる。
言葉とは逆に、楽しそうな調子で。
「丈にしたこと、お前にそのまま返してやるぜ。地獄を見ろ黒澤」


薬による快感と下肢の苦痛、奥の熱。
引き上げられる髪と左腕の激痛。
跳ねあがった俺の体を抱きかかえるようにして、
限界に達しそうな俺のものを稲垣が掴み上げた。根元をキツく掴まれる。
「そう簡単にイかせやしねぇ。十分苦しめ」
「快楽」という言葉よりも先に、「責め苦」という文字がかすんだ脳裏に浮かんだ。


「ぶっ飛びな」
稲垣の声が、渦の中で…聞こえた。



眩しい日の光にぼんやりと目を覚ます。
「……?」
見ると、稲垣と工藤の影はもうなかった。熱さにむせて、不意に異変に気づく。
両手両足が動かない。
ガチャリ。
自転車用のキーチェーンがベッドに拘束させているのは、俺の裸の手足だ。
血の気が引く。
奴らはもういない。このままにして帰ったってのか?!
ご丁寧にベッド脇に携帯電話が置いてある。
手を伸ばせば掴める距離。
だが、奴らの真意はわかっていた。
俺は、この姿を誰にも見られたくない。そして見せられる相手もいない。
しかしいずれ見つかる。
一週間もすれば、野獣会内の誰かが顔を出さないリーダーを心配して様子を見に来るだろう。
ソレとも、俺が餓死するのが先か?
俺は何も出来ないまま、携帯を握り締めたまま、
バッテリーの残量に目を走らせて1日を過ごした。

日差しが消え、窓の外に暗闇がまた訪れる。
眠れるわけがない。
何度かもがいてみるが、案外このキーチェーンという奴は強い。
むなしく音を立て、それがまた俺の焦燥感を煽る。
カチャン。
ソレとは別のところから金属音がしたのに気づき、びくっとする。
部屋の扉が開く。
「……ッ工藤ッ!!?」
ライダースーツに身を固めた工藤が親しげに笑いながら入ってきた。
「風邪引かなかった?黒澤さん?」
「テメェ抜け抜けと…」
「薬、まだ余ってるね?」
「…」
その一言で、心臓が酷く苦しくなる。
周りに鼓動が聞こえるのではないかと思う。

一瞬の俺の表情を見たのか、工藤が哀れむように近寄ってきた。
「そんなに薬が欲しい?」
「テメェで食らってマスでもかきな」
「んじゃ二個ぶち込んでやるよ」
動けない俺の筋肉の間を縫って、工藤の指が容赦なくソレを押し込む。
俺が力を入れても出せないように、奥深くまで指で探られる。
「ぐ…ッうあ…っ」
「やっぱり電話しなかったんだな。
プライドなんかに頼るからこんな目にあうんだよ、黒澤さん」
ジワリと溶け出すクスリが、中で熱くなり、壁を刺激する。
何もしていないのに、体中が敏感になる。
自業自得だ。俺のクスリをテメェで使われて。ソレでよがってるんだからザマがねぇ…。
快楽も耐えきれないほどなら苦痛になる。

「丈からプレゼント。これでもっと電話しずらくなるね。」

工藤がちらつかせたそれを見て、俺の体は酷くこわばった。
いくら食いしばっても歯の根が合わない。
「怖い?大丈夫、多分そのうち慣れると思うよ、知らないけど」
実物よりもかすかに大きなソレは電力が尽きるまで責め上げる、
俗称バイブレーターとか言う…
「く、工藤ッ!テメェただじゃおかねぇ!『SOUL・CREW』つぶしてやるッ!」
「よがり狂ってイッちまうまで見物してやるよ」
俺の罵倒にも取り合わず、工藤はソレを無理やり押し込んだ。
人にはない冷たさと、削られるような痛みに、思わず声を上げる。
工藤はじっと俺を見ていた。
低い振動音が絶え間なく響く。

かちりと言う音がして、
工藤が煙草に火をつけたらしいのが分かった。
本当に奴は俺が果てるまでじっと見ていた。
痙攣する俺の体を押さえつけ、
じっと俺の顔を見つづける。
「見ん、なぁああッ!」
そう叫ぶ俺を笑いながら見下ろす。
煙草の火を、下腹部に落とされて…俺は昇り詰めた。

工藤はそのまま帰っていった。
鍵も掛けずに。
俺の中で責めつづける振動。
気が狂う。
冷静になろうとしても、クスリがそうさせない。
自業自得。
何度も脳裏に浮かぶ言葉。
何度も、何度も痙攣する体。
何度も聞いた自分の叫び声。

日差しの中、うつろに震えながら携帯のボタンを押す。
連続してやってくる波に、耐えきれずに悲鳴を上げながら。
電話口に出た男に、俺は息も絶え絶えに、やっとのことで言った。

「もう…許してくれ…工藤ぉ…」

俺が望んだこと、そして奴が待っていたこと。
まんまとはまった自分。
俺は工藤の手に堕ちた…。

フリを…したんだ。



FIN


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何ですかねこれは。
ヤらしいですがな。(笑
黒澤って、なんでこう、幸せムードないかな〜?
無理やり工藤とラブラブにするか?
いや、このあとじゃ無理だな…(涙
ちなみに戦いのシーンはまじめに書いてないので変です、
あとで気が向いたら直しますにょ(絶対気が向かない(苦笑
ちなみにウチの丈はもともと受けではないのでごめんなさい…
なんか丈受け多いそうで;
凪×黒澤って駄目ですか?(飛びすぎ