ゆき。

雪だってンだよ。


積雪5センチほど。なんだって?今年は積雪量が過去最高?
北海道なんか70センチだとよ。
ふーん。
70センチってどれくらいよ。
しらねぇ?ああ、そうか、センチっつってもなあ、インチで言わなきゃわからねぇよな。
そうだなー
んー

自分で考えろよそれくらい。
そうだな、オメーの腰の辺りくれーじゃねぇのかな。

ザク。

…ククククク

…っははは、

…駄目だ、もうこらえきれねー!


「雪降ってやンのーー!!!ぎゃははははははははは!!!」
「笑うな!笑い事じゃない!」


そう、あたりは真っ白、雪の中。
チェーン?ないない。
スタッドレス?もっとないない。
セイバー…クリードのヤツが炎でも吐ければ、下界まで降りられるかもな!

携帯?圏外。

もー俺おっかしくって。
車の中で目が覚めて、周りが見えなくてドびっくり。
クリード叩き起こしたら、あわてて扉開けて落ちてきた雪かぶっててよ。
う、くくく、だ、駄目思い出しただけで腹が捩れる!

「秘書の女怒ってンぜ」
「だろうな…ぐぅ」

もう空から落ちてくる雪はなかったけれど、
まだ溶け始めも見せない雪の中、2人で一番の歩き初め。
ざくざくと踏んだ足元がやけにまぶしくて、見上げると目をやられそうな光の束。
すぐ、溶けちまうよコレくらい。


早いトコ。現実逃避やめようぜ。
マジな部分で俺たちがどこまでいけるか。お前が俺に付いてこれるかどうか。
俺がお前についていけるかどうか。
そんな感じ?





雪が解けるまで、外で暴れたり車の中でイヤんなるまで話したりした。
俺はお前に飼われたくない。
クリードが俺を誘う、「一緒にアメリカに来い」とよ。
…コレは、飼われちまう事なんだろうか。
クリードは兄貴みたいに俺を可愛がるだけなんだろうか。
反町さん。あんたのことは尊敬してる、いろいろ教わった。
けどわかってんだ。
俺はあんたに出会ったおかげで成長した、そして成長できなかった。
まだ俺はいける。
まだいける場所がたくさんある。
試してみたい、けど…
「山崎」
「ん?」
「借りてきた猫は本当におとなしいと思うのか」

だとさ。
…確かによ。アメリカに行ってこいつに俺がもし飼われる様な状況になったとしても
俺はいつでも牙をむいてるような気はするよな。
どこで覚えたんだろう。
いつからそうなったんだろう。
他人を受け入れられない、信用できない、生かす事も出来ない。
潰す事と殺すことだけ。
この手は何かを破壊する。


無意味に誰かを殺したいやつなんて、いねぇよ。


案の定、空港に着いた俺たちを待っていた秘書はカンカンだった。
って言うか、この女、一晩ここでずっと張ってたわけ?怖い怖い。
秘書に会ったとたんにクリードのヤツ、やけに現実味を帯びた顔でよ。
仕事の話なんだろうな、してて。
俺、なんか邪魔者みたいで。
やっぱ、どうしようか。

「山崎」
「ついて来い、…って?」
「…来る気はないのか」
「…なんか邪魔みてぇだしよ。」

そんな顔、すんなよ。
さっきの現実味のある顔のほうが、カッコいいぜ、オッサンよ。
旅行気分に引きずられんのはもう真っ平だ。
軽く手を上げて。
俺を呼ぶクリードに背を向けて。歩き出した。
秘書と言い争う声が聞こえて。でも俺を追いかけてきたりしねぇのな。

それでいーんだよ。

どうせ、別個で生きてる2つの獣だろ。

入れない部分を侵すことは、できねぇよ…






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搭乗のアナウンスに押されて、俺は山崎を追いかけることを諦めた。
ついてくると思ったのに。
面白いことなら、何でも願ったりだったんだろう?
…いつか暴いてやる。
暴いてやるからな。


アメリカに戻った後、俺は仕事とくだらないことに追われ続けた。
くだらない、コト。
どうにもスリルがねぇ。
面白くねぇ。
退屈だ、忙しいくせによ。
あー、山崎をこう、めちゃくちゃに抱きてぇなぁ。
セックスにスリルが付きまとうだなんて、思っても見なかった。
あんな病的な麻薬みたいなやばいこと経験しちまったらよ。
クスリは抜けねぇってのが基本だよなぁ…


最近、酒の量が増えた。
行きつけだったバーにも顔を出さずに、いつも家でコニャックを開けて。
いい加減、外に出ないと、腐っちまう。
笑われちまうよなぁ。
会いたくてたまらねぇ、馬鹿か、俺は。
重い腰を上げて、車を走らせて。
明日は休日でもなんでもないってのに、俺はまた酒びたりになろうとしている。
せめて、内乱でもあって殺し合いでもはじまりゃ面白いのによ。

カラン。

バーの扉を開けて。俺に気づいたマスターが話しかけてくる。
余計な言葉を掛けるな。
俺は…

「だぁかぁらぁ!言ってんだろぉ!日本なんか経由させてたら質がおちるってぇの!」

は?

「俺に任せろって…直で買い付けりゃ美味しい商売になるぜ」

奥のVIPから聞こえてくるでかい声。
そんなコト、こんな大音量で話していいのか?
なあ
なぁ。

「…声が、大きいぞ…」
「…お」
「山崎…」

よぉ。
と、俺に手を上げて。
当たり前みたいに、何でこんなところに存在してるんだ!!!
何で、何で…。
馬鹿、野郎。殺すぞ。食うぞ。
すべての責任はお前にある。
この気持ちも。
すべて…

「フィールド広げちった」

そういって笑う山崎の向かいに、このあたりのマフィアの幹部。
向かい合って平気で酒飲んで交渉だなんて。
コイツは、コイツは…
なんて危ないヤロウなんだ!!!




まだ信じられない。
俺の車の助手席に、山崎が乗ってる。
もう一度確認する。
乗ってる。
「なんだよ?」
な、なんでも。
「…この界隈、詳しいわけじゃねぇんだ。案内しろよ」

なんで。
なんで。

「あんまそんな顔すんなよ…」
「だってお前、山崎、俺は」
「飼われるのは御免だけどよ。染み付いて離れねぇのよ…とんだヤツに汚染されたと思ってんよ」

困ったようにそういって笑う。
嬉しいね。
汚染されに来たってわけか。

「住まいは?」
「そのへん」
「曖昧だな」
「探すのも面白いだろ」
「…」
「多分、溜めこんで待ってるからよ」

何、言ってるんだ。
溜まらせるような暇なんか与えはしないぞ。
鷹を括るな、ふざけたヤツだ。
手に入りきらないから欲しくなる。
こいつは多分俺のそんな性格をわかりきっていて、こんな焦らすような事をするんだ。
ずっと、追われ続けていたいんだろう?
「捕らえに来いよ」
その体の奥、疼いてるんだろう?

俺は狩をする獣。

牙を向き穴倉で潜む蛇をこの爪で押さえつける。

絡みつく蛇の体。



欲しあい続けるために、お互いが張った罠。



もっと焦らして、もっと欲しがらせるのがお前の役目だ。
そのたびに捕らえて噛み付いてやるから、せいぜい楽しませろよ…
自由な獣であり続けるために。

I've
been there before to the deadest end
Ain't never goin'back,
I ain't got nothing to defend
Flappin'wings
and
soarin'high might give you highs

But

crashin'down the steppest
hills is just what I advise...

More deep
more deep,deep,deep



1weeks is FINALE
...to be next SEX
thank u for reading


まだまだ、これからだぜ…