正直。
委ねたも同然。

言いたくてもいえないくらいなら、
無理にでも言わせてくれよ。


俺が許したからなのか、クリードの目は、やたらと爛々と光っているように見えて。
なんとなく、
ゾク、っと…
ゾクゾク、って言うか、
本気で、ゾク、ってよ。

「さぁて、何から聞くかな?」

「なんでも、聞けば?答えるか答えないかは、俺の勝手だぜ」

「ほほう、そりゃ楽しみだ」


妙な楽しみ、与えちまったかな?

クリードの奴、篠原の忘れ物持ち出してくるし。
…こりゃ、俺、明日、腰立たないかもな…
覚悟の上だよ。
いろいろ、言わせてやってくれ、このひねちまった俺に。

「追っかけてねーと逃げちまうぜ」
「追いかけられたくて逃げるんだろう?」
「…」
「早速だんまりか?」

にや、と笑うクリード。
沈黙は肯定なり、とかつぶやいて。
…ったく。
そのとおりだよ。

俺のやばい誘惑、
乗ってくれるのは、クリード、オメーだけだろうし。
照れくさくて、とか、怖くて、とか、そんな理由で俺が黙っちまったときは
せいぜい、この頭フル回転して、お前に喋らせてもらうように仕向けることにすんよ。

「頭脳プレイって奴か?」
「プレイ違いだろ」

俺が笑うと、クリードの手元で鎖が鳴った。

「無理やりでいいんだな?」
「言いたくっても言ってやらねーよ」
「そうこなくちゃ面白くない」

やばいなぁ。
やばいよなぁ。
この感じ。

異常なまでに、そそるよなぁ…。

クリードがどこからかもって来た鎖、
コレも篠原の持ち物かどうかは知らないけど。
出しっぱなしのシャワーから、湯気がもうもうと立ち上がっていて、
バスルームは柔らかく暖まってくる。
バスルームの天井のフック(?!?!?)に鎖を引っ掛けて。
「ちょ、ちょっと待てクリード?」
「問答無用だろう?」
「つ、釣るの?アリかよ?!や、イッテェ…!」
無理に引っ張られた手首、枷とともに鎖に引き上げられて。
「こんなもん、何処で…!」
「シノハラに感謝しろ」

…篠原…帰ってきたらちょっと殺す。

「吐かせて欲しいんだろ?」
「誰が、欲しいっつったよ」
「何でお前は、こういうときには饒舌なんだ?」
「…」
え?
俺が、饒舌?
普段だって、饒舌だろ?
クリードが取り上げた、シャワーのヘッド。
柔らかい雨が、その先から降り注いでいて。
俺のつま先に、ソレが緩やかに当たった。
「セックス中のほうが素直か」
クリードが笑う。
そうかも、なんて、一瞬俺が思う。

「身体が冷えるだろう」
「…たいしたことねぇよ」

俺の、胸元触って。

「冷えているぞやっぱり」

なんて、やさしそうに。
なんだよ、と面食らった俺の…
下半身、中心部にあの柔らかい刺激が
「…っ!!!」
「どうした?」
「や、やめ…」
「何を?」
「シャワー、どけ…」
クリードは手をどけずに。
そのままの刺激が俺を強く弱く攻め続ける。
高く上がった両腕の内側、その舌がなぞって…
「ん、あっ、…」
「素直に声も出すようになったな」

…って、
俺、前、声出さなかったっけ?

妙に照れて。
口をつぐんで…
それをクリードの指にこじ開けられた。

「大事なものをなぜ捨てた?」
「…え?」

と、突然すぎねぇか?
俺にだって、心の準備ってモンが…
「簡単な質問だ」
シャワーヘッドが後ろに向かって軽く滑らされて。
つい、細い悲鳴を上げた。
あわてて、もう一度口をつぐむ。
「大事なら、捨てなくても良かっただろう」
そんなこと、お前に言われたくねぇよ。
言わないほうがいいかな、って悩んで
見えないところで焼こうなんて、即効逃げて
逃げたはいいけど追いかけて欲しくて。
全部、言えなくて。
「もっと、無理やり言わせろよ…」
「そうか」

カラン。

シャワーヘッドが音を立てて落ち
水の噴出す勢いで、床でかすかに暴れて壁にぶつかり止る。

クリードの身体が俺の近くにズイ、と寄って。
「覚悟はいいか?」
「…大したことじゃねぇだろ」
「どうかなぁ」
くだらない会話。
俺の中の何一つ引き出さないで。
クリードの指が、俺の腕から脇腹、腰をなでて、後ろを柔らかく掴む。
「ん…ッ」
「言えば、イかせてやる」
そういったクリードの腕が。
俺の身体を不意に持ち上げて。
「な、なん…?!」
腰を持った腕、そのまま滑らせて足を両肩に開いて担ぎ上げて。
「すごい格好だな?」
「ば、馬鹿、離せ!!!」

俺の両足、担ぎ上げたまま。
そのまま、俺のそこを舌なめずりして飲み込む。
「ん、…ッ」
ちゅる、って、嫌な音。
腕を引くと、かすかに鎖が鳴った。
なんも、出てこねぇよ、何も言わねぇよ。
何が言いたいのか、俺にもわかんねぇよ。
なんか、
沢山、聞いて。
俺の中身さらけ出して俺に見せてくれよ。

唇を滑らせて、口から吐き出して。
舌先で舐めながら。

「…じゃあ質問だ、山崎」
「…」
「何を聞かれたい」
「…ッ…」

胸、苦しくなって…

「う、…、な、なん…って」
「何を、聞かれたいのか聞いているんだ」
「そんなん、俺…」

思わず逸らした目線。
縦に舐めあげられて、強く閉じて止めた。
「俺はそれが一番知りたい」
「…って、だって、俺は…」
しどろもどろで。
まさか、そんなこと聞かれるだなんてよ…
まさか、こんな格好させられるなんてよぉ。
恥ずかしくて。
顔が真っ赤になるのを感じた。
「どうした?」
「し、しらねぇ!」
「知らないわけがないだろう」
「…ン、あぅ…!」
篠原の忘れモン、ゆっくりと後ろをなでる感触。
「入れるか?」
「…、っ」
ゆっくりと首を横に振って見せる。

俺を見上げるクリードが。
わざと舌を出して、俺を舐め上げる。
「や、や…!!」
「早く答えろ。何を聞かれたいか、分かるか、質問の意味が。」
「…わかんねぇよ!」
「そりゃ困った」
真後ろで。
何か音がして、
思わず身体をよじった瞬間…
「ぅ、あ……?!」
一気に奥まで押し込まれて。
鎖を掴んで身体を引き上げようと逃げる、けど
「山崎。逃げるな。考えろ」
「…ふ…ッ…や、やだ、ってんだよぉ、こんな格好!」
「答えれば足くらいは下ろしてやる」
「…ッ…」

だって、俺にもそんなこと、わからねぇ…

「っぁ、クリード…深すぎ…ッ」
「まあこの体勢なら、なぁ」

なあ。
なぁ。
なんで、
なんで、俺にそんな質問するんだよ。
俺に、聞きたいこと、ないのかよ。

なぁ…

クリードの腕が、
俺にその器具ばかりを強く押しこんで。
たまに先端を刺激する舌に、強く反応して身体が仰け反る。
「俺はな」
「ン、んッ…」
「お前の言いたいことがなんなのかが知りたいんだ」
「あ…」
もう一度、舐めて。
「ひああっ!」
「でもお前は言ってくれない」
静かなつぶやくような声。
なんだか、寂しそうな。
「…だって、よぉ」
「なぜ言わない!」

クリードの目が、細くゆがめられて。
そんな、切なそうな…
「お、お前らしくねーぞ、そんな…」
「俺の本当の気持ちを、お前はそんな風に言うのか」
なにを、
何を言わせたいんだよぉ…
俺が言いたいことは
今は、一個だけ…
だけど、それは俺の単なる欲望だから

強く。
それだけで攻め立てられて、息が乱れる。
駄目だってばよ…
そんなんじゃ、
駄目
お前の
じゃなきゃ

「何でお前は!」
「ぅ、ああっ!?」

開いた足の外側を、爪が走る
激痛に、気が遠くなりかけて、クリードの目線がかすかに揺れて目に入る
何で、そんな苦しそうな顔…

「何でだ?」
「…っぅ…」
「…俺を欲しいと一言、言って欲しいだけなんだ」





驚いた俺の、目、瞬き、出来なくて。
クリードがそっと俺の其処、口に含んで。
「うあ…」
やわっこい愛撫、後ろから引き抜かれた感触、代わりに入ってくる指。
あったかい舌の動きに…めちゃくちゃ恥ずかしくなって!
そっと下ろされた足。
腰を離さない腕と、指と、舌先と。
ぬめった舌が糸を引いてそこから離れて。
「ここはこんなに俺を欲しがっているのに…何故だ?」
俺を見上げるクリード。
やめろよぉ、そんな顔…
恥ずかしくって
駄目だって、
そんなん…

もっと激しくして、無理やりじゃなきゃ言えねぇって

言ってンのに…

中を探る指。
顔を逸らして。

「山崎」
「…」
「お前の性格は良く知っている」
「…っ…」
「でも俺は言わせた言葉じゃなく、お前の本当の…」
「わかってんよ!!!」

見上げるクリード、睨みつけて。
俺、顔、真っ赤。
なんで、こんなこと。
言わせンだよ。
「恥ずかしくっていえねぇんだよ!!!」
「それは、わかってはいる、だが…」
「だから、無理やり、やれって言ってんじゃ…」
「本当の言葉かどうか分からないようなモノは…いらないんだ山崎」
足先から、指がなぞって。
動けない俺、それを阻むことが出来るのは、
俺の言葉だけ?
こんな恥ずかしいこと
恥ずかしいって思うようなことなんて、なかったのに、
クリードとやってて、こんなに恥ずかしいなんてよぉ。

クリードが、寂しそうに目線を落とした。
俺の其処にゆっくりと指を這わせて、なぞって。
「み、見ンなよぉ…」
「恥ずかしいか」
「だから、言ってんだろ!!」
「大丈夫だ…」
何が、大丈夫なんだよ…
クリード、また、口で、し始めて。
駄目、だって…ばよ!本気で、俺、マジで、恥ずかしい!
こんな雰囲気の所為だ、
俺には、
もっと恥もなんも感じないようなセックスじゃなきゃ
耐えらンねぇ、よぉ…

俺は、かなり半泣き入ってて。
口の中で愛撫を続けながら俺を見るその目に、
体中犯されてる気分で…

ギブアップ、寸前…

「言う、から、もうやめ…」

俺の声に、クリードが口を離した。
身体を起こして、俺の口元に舌を触れさせる。
キスされることさえ、恥ずかしくて。
やけに、いやらしい事に感じちまってる。
クリードが、あんなこと、言うから…
馬鹿、ヤロー…顔が、熱いよ…。

「ま、待て、言ったら、いつもみてーな…」
「約束する」
「…嘘、つくなよ」
「頼む。聞かせてくれ、不安で仕方がないんだ」

言おうとして、口を開きかけて。
…ん?
なんか、引っかかる…
……
不安で、
仕方がない?

「…ク、クリード…」
「なんだ?」
「てめぇ…」
この、クリードの切なげな雰囲気。
「演技、してるだろー!!!!!!!」


即効で俺の目の前で、べ、と舌を出してクリードが勝ち誇って大笑い。
「はっはっは、ばれたか」
「しんじらんねーーーー!!!」
「お前の照れているところが最高だったなぁ」
なんなんだこいつ、めっちゃくっちゃな、なんなんだ本当に!
もう俺の頭ン中ぐちゃぐちゃ、自分の考えてることさえ言葉にならねぇ!
あのなあ!
俺はなぁ!!!!
恥ずかしかったんだぞ、死ぬほどーーーーー!!!!

「イヤー面白かったコト」
「てててて、てめぇ…!一生言ってなんかやらねぇからな!!!」
「お?言ったな?」
「ったりめーだ!」
「『拷問』、はこれからだが、その言葉に偽りはないな?」

ぬぐぅぅう。
っていうか。
今ので十分拷問じゃぁ!!!

「死に腐れー!!!」

がー!
クリードに向かって牙を剥いてやると、
やたらと楽しそうな顔で笑われた。
「なんだよ!」
「それは本当の言葉だな」
「…はぁ!?」
「そう言うお前が好きなんだ」

は?
ちょ、ちょっと何言って…
俺が聞き返す前に、クリードは勝手に俺の身体、撫で始めて。
あいまいに流されて、そのまんま俺も流されて
全部あいまいに

クリードの奴
聞きたかったのは
俺の本音だろ
何でもいいから
聞きたかったのは
本音だろ?

怒るトコとか
感じるトコとか

…照れるトコとか


全部、見せちまったよ。
あの御札、燃やした所為かな…アレが最後の壁だったとか。
なんても、
思っちまったりして。
燃やしてよかったのか、どうか。
俺を突き上げながらクリードが耳元で
「ソリマチ突破か?」
なんて言ってやがって。
なんだよ、
ただの嫉妬かよ。
突破してるよ十分オメー。

オメーは反町さん以上の





 馬 鹿 。





…ぁ、死にそ…



END