どうも、様子がおかしいんだよなあ。
朝メシ食ってたときも、そわそわしててよ。
テレビも見ずに一生懸命俺に話しかけて、俺はそれをまあ、あんまりしつこいからよ、
まな板に水状態で。
部屋に引っ込んでなにかカタカタ打ってみたり、
出てきて俺に絡んだり。
「いったい、何だってんだよ」
「ああ?なにがだ、ちょっとまて、うん、そうだな。」
「??」
部屋から顔を出したと思ったら、顔をそらして、一人で納得して。
調子くるうでやんの。
しょうがねぇから、まあ、ほっとくか。
そうそう、犬に朝飯やらなきゃなんねぇし…
ったくよ、篠原のやろう、何時になったら帰って来るんだ。
電話ひとつよこさねぇし…
逃げたんじゃねえだろうなぁ。
もしそうなら、追いかけていって女ごと始末してやるか。

キッチンの椅子に横向きに座って、胡坐をかいて。
犬の缶詰の注意書きみてぇなトコロなんか、読んでみた。
えーと、
一日に2缶?
おお?
俺、一日に5缶はくれてたぞ。
…まあいいか。
…クリードのヤツ、まだかな。

水をたっぷりとあたえてください、か。
…面倒だな、犬ってのは。
自分で蛇口ひねって飲むってワケにゃいかねぇもんな。
…首をそらして。
部屋の方を見る。

なんか、さっきから、ガタガタと音はしてんだけどな…

「オイ山崎」

「あ?」

顔も出さずに、呼ぶんじゃねぇっつーの。
そう思った途端に、ひょこ、と顔を出して。
「今日一日暇か?」
「ああ、別に何もねぇ」
俺のその返答後。ふぅ、と安心したようなため息。
「なんだよ?」
「今から、するぞ」
「は?」
「こっちへ来い」

するって、セックス?
っていうか。
こっちへ来い、ってなんて言い草だよ。
「…ずいぶんと偉そうな物言いするじゃねえか」
「ん?いつもとかわらんだろう」
そういいながら、また引っ込んじまって。
また、部屋の方で、ガタガタガタガタ。

なんか、むかつく。

ほっとくなら、ほっとけばイイじゃねぇか、
そっちはそっちでやることがあって忙しいんだろ?

「山崎、来い!」
「うるせぇ!行くか!」
「…なら、其処でいいんだな」
「え?」

ガタン!
と、扉から出てきたクリードは。
もうすでに上半身裸で。
「な、なんだよ!…そんなに急いでやることでもねぇ、だろ…」
クリードの妙な出現の方法に俺は驚いて。
なんだよ、なんかソレじゃまるで、サカリの付いた猫…
そういや、コイツ、動物に近いし…もしかして、
「クリードお前、サカリでも来てんのか?」
無言で近づいてくるクリードの手が伸びて。
ソレをパン、と払ったつもりが、逆に握り締められた。
「無理にでも、お前の全部を味わい尽くす」
「…クリード…?なにイカレてんだ、よ、はは…」
俺のごまかし笑いは。
クリードの手のひらでふさがれた。
…!
ガタン、と椅子に胸を押し付けられて、椅子ごと倒れそうになって、あわててしがみつく。
「な、なにすんだ!」
「脱げ」
「っんだと!てめぇ、俺を公衆便所か何かと一緒にしてんじゃねぇだろうな!!!?」
「がああああっ!!!!」
「!?」

クリードの素早い動きに、俺は反応できなかった。
我に返ると、すでにもう床の上で、服はボロボロ。
「ンのやろ…」
「てこずらせるな!」
「なに、焦ってんだよ…!」

俺が上半身に来ていた黒いシャツ、もう、引っぺがされるのは時間の問題。
床に背中を押し付けられて、クリードの舌が俺の首筋に這う。
「おい、クリード…ッ、どう、し…」
「お前の味を忘れないように、だ」
「え?」
俺の首から、胸へ、舌が、懸命に這うようで…
どうした、ってんだよ…
忘れないように?
…どういう、ことだよ?!
「まさか…」
「言葉は無用だ」
強く言い放つクリードの言葉の裏。
俺、よめきれねぇ…けど、
なあ、
忘れないようにって…
クリードの舌。
この感触。
俺も忘れない方が、いいわけ?なのか?
…コレで、最後?


体中を舐め取って這いまわる舌。
俺は、声を殺すのをやめた。
「イイ、反応だ…」
「…ぁっ、ン…っはぁ」
「今日は、やけに鳴くな…?」
…うるせぇ、なぁ。
「忘れられないように、刻み付けてやる…」
よせよ。
もう、忘れるとか、そう言うこと、言うの。
俺の腿に手をかけて、開いて。
「…っく…!」
「恥ずかしいか?」
俺に、わざと舌なめずりなんか、見せて。
なんだよ、
調子狂うからよ。
やめろよ。
「どうした?困った顔をして」
「…何でも、ねーよ…ッ…」

クリードが俺から離れてく、なんて。
想像したこともなかった。
もしソレがあったとしても、俺は普通でいられると思っていたかった。
なのに、なんで、俺こんなに、すがりつきたい気分なんだ?!
コレじゃ、兄貴のときと一緒じゃねぇか。
クリードは兄貴とは違う。
俺を求めてやまねぇ、俺のドラッグ…
逃げるなら、追い詰めて、俺の麻薬に浸して、やればいい。
「いいぜ…やめられねぇくらい味合わせてやる」
苦しいけど。
笑って見せてやる。

クリードの舌が、俺の其処を舐めとって、そのまま咥え込んだ。
「んう…!」
のけぞって、その髪を掴む。
ぴちゃ、と、クリードの唾液の音。
「お前の匂いがするな…」
舐めて。
俺の其処を全部味わい尽くすかのように、ねちっこく隅々まで、なんて、
「…はぁ、あっ、あ…!」
「いいぞ、イッて見せろ」
「や、だ、バカヤロ…見んな、よぉ…!」

こういう雰囲気、苦手なんだからよ。
そんな目で見られたら、俺…
「…んん…ッ…!」
「…何もしていないのに、イッてしまうとはなぁ…?どうしたんだ山崎?」
「う、うるせぇ。馬鹿、馬鹿やろ!」
死ぬほど味わいたいのは、俺の方だ。
コレが最後なら、
とことん…

椅子に座ったクリードの前に、かがみこんで、膝を突いて。
掴んで、口元を寄せた。
相変わらず、デカイ…っと、おっと、感想なんか持ってる場合じゃねぇか。
いつも、口でするとき、苦しくて仕方がねぇんだ。
「んぐ…」
「!山崎?!」
無理に、口の中にくわえ込んで、喉の奥まで突き入れた。
いーよ、一度くらいならよ…
あんまり、寂しいこと考えるのはやめにしようぜ。
そもそも、寂しいだなんておかしいんだ。
やめだやめやめ。

振り切ってみようと思ったトコで、駄目じゃん、俺。
「なぁ…クリード」
「ん?」
「…中…」
「…んんん??」
覗き、込むなよ。

あー。
やっぱ、こういうときでも、いえねぇ!

「身体の中、全部俺で満たしてやろうか?そうして欲しいんだろう」
「…っち、…なんだよ、そう言う言い方、……」
「ん?」
「…全部、中で出せよ」
「当然だ」





…もう、何回くらいやっただろ。
目の前、ちかちかして…
クリード、俺をベッドまで運んで、上に乗っかってまた、舐めてる。
「まだ、いけるだろう?山崎」
「…う…」
無理、っていいてぇトコ。
さっきだってやっと気絶から戻ってきたトコで…
気がついたとき、クリードは俺ン中に入ってたけどな…
よっぽど、全部味わいてぇみたいだな、って、それくらいしか思わなかった。
俺の返事を待たずに、クリードは俺の腰を持ち上げて。
「…あ…!」
「コレだけしているのに、まだ締め付けてくるってのは、お前くらいしかいないぞ」
つまんねー戯言、好きだよな、お前…
もう、身体ン中、快感しかなくて。
知らずに、その背にしがみついてた。



精神まで朦朧とさせやがって…
それに、甘んじてる俺は、
どうも、まだ、欲しいみたいだぜ…








眠気と戦ってる俺の横で、
クリードが葉巻なんかに余裕で火をつけてるのが見えた。
「もう、終わりかよ」
いいよ、俺も戯言吐いてやらぁ。
「…まだ足りんか?」
「…お前はどうなんだよ」
「全然足りんな、もっと本能の部分に、そうだな、
 向こうに行ってもお前の匂いが日本から感じられる位、沁み付けて置きたい」

…やっぱ、どっか行っちまうんだな。

クシャ、
シーツが、俺の手の中でうねる。

「この程度で理解できるほど俺は簡単なつくりじゃねぇんだよ」
「そうだな、ソレはよくわかってる。」
「ふん…」
「あーしかし足りんな!このくらいじゃ3日ともたん!」

てめぇはニワトリか。

「シノハラが明日帰ってくれば問題はないんだ!」

まったくだ、アイツはいつまでルーマニアをうろうろと…

ん?

「あ?」
「お前は日本にいなきゃならんだろうし…」
「ああ?」
「いくら重要とはいえ3日もアメリカに行かなきゃならん!どうにかならないのか山崎。」





どうにかならねぇのはお前のその脳みその馬鹿さ加減だーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!





ゴンゴンゴンゴン!
クリードの腰骨、握りこぶしで何度も殴って。
ソレくらいの体力しか残ってねぇんだよ!
なんだよ!
忘れるとか
わすれねぇとか
そんなこと言ってっから、この俺が大盤振る舞いしちまったじゃねぇか!!!
「何だ山崎?今すぐ欲しいのか?」
ううー!
殴ってるのにどうも俺のコブシは、ぺちぺちと情けない音を立てて。
「…まさか、もう帰ってこないとでも思っていたのか?」
「テメェは自分で竿握って一人腹上死でもしやがれー!!」
「…照れることはない。うんうん。照れることはないぞ山崎?ン?」
「知ったかぶりすんなー!!」
ばたばたと暴れてるつもりの俺のヒタイ、指でくい、と押して。
それだけで、動き封じられちまって、ああ、もう、飛びてぇー!
そのヒタイの指の代わりに、
クリードの唇が、そこをちょん、と押した。
「ばっかやろう…」

俺はもう、シーツかぶって、顔、あっちい!なぁ、もう…

まさか俺がお前にここまでハマってるだなんて、思っても見なかったからよ…
クリードはそんな俺の反応に、今までに見たことないような満足な笑顔を見せていて。
なにをするにも、ニコニコニコニコ。
くそ。
「明日の朝、5時に日本をたつからな」
「あー勝手に行け」
「明後日の夜にはこっちに着く」
「…」
「ん?」
「…飯くらい用意しといてやるよ」

もう、観念したよ俺ぁ。
こんなつまんねえコトで、自分の気持ち、確かめるなんざ。
ばかみてぇ。
だけど。
まあいいか。

俺がかぶってたシーツ、クリードの匂いがすんげえ染みついてて。
なんか照れたから、顔を出した。




ちょっと安心してる自分が、やけにくすぐったかった。
帰ってくるころにゃ、俺の身体も万全だろ。
そん時に、ものすげえギロチン食らわせてやるから、覚悟しとけよ…。
照れ隠しの一発ってのは、キツイって相場が決まってんだぜ。



気ィつけて、行って来いよ。