「オメェよぉ、俺をイかせる事が出来るか?」 久しぶりに、そうだな、3ヶ月ぶりくらいじゃねぇかな、に、会ったってェのに。 顔見た途端の第一声、コレだぜ… 「セイバー、オマエなァ…」 咥えていた煙草を危うく落としかけながら溜め息と共に言葉を吐き出す。 今俺が立っているのは、自宅の玄関。 まぁ、アレだ、知ってるだろ、セイフハウスってヤツだな。 セイバーの野郎は俺をツケるなんてストーカーじみた真似をしてこの場所を知っている。 …相手によっちゃ殺してるところだぜ?まったくよ。 セイバーはと言うと、俺の目の前で、今、訪問して来立てだから玄関先で。 胸を反らして俺の言葉の続きを待っている。 それを軽く見上げて。 「頭ン中、ソレばっかりなのかよ?」 「重要な要素だと俺は思うがな?山崎、オマエは違うのか?」 「…まァ認めるけどよ。突然会った途端にだぞ?『イかせる事が出来るか?』ってェなァ…」 ちょっと首を傾げて。 「変か?」 「あたりめーだボケ。」 「…俺が普通でいられるのは、快楽があるからなんだがな…」 「?」 今度は俺が首を傾げて。 とにかく、こんな所で立ち話、近所にでも見られたら面倒だ。 「中入れよ」 「ん?おお、そうだな、邪魔をする」 オッサン地味た屈み腰で、玄関をくぐって。 外人だとは言え、本当に背が高い男だよな。 俺が大丈夫なこのマンションの玄関の間口の高さ。 それでも間にあわねェってんだからよ。 先に居間に入っていた俺は、足元に落ちてたライターを拾おうと、身を屈めてた。 真後ろに気配を感じて。 振りかえろうとして身体を起こす。 肩を掴まれて。 …なんかよぉ。セイバーの野郎、様子が、変だ。 後ろから俺に抱きついてくるなんてよ。 今まで、一度も… 「なァ…。山崎よ」 「んだよ」 「こう、まともなセックスさせてくれねぇか」 ???? ま、まともなセックス? 「い、今までどんなんして来たンだオメェは、SMか?」 「…馬鹿野郎、茶化すな」 「…んだよ、…調子、狂うな…」 セイバーの唇が、俺の首元を捉えて。 首筋にそって這わされる。 ゆっくりとした動きのソレは、何時しか濡れた舌にすりかえられて。 「…ン…ッ…と、突然過ぎるぜ、おい…」 「…気持ち良くなれねぇんだよ」 「え?」 「いくら女とやッてもよ、男取り替えてもよ。違うんだ。」 セイバーの声が、俺の耳元で。 声と共に吐き出される息に、少しだけゾクゾクきてんのは、黙っておく。 …しかし、珍しいぜ。本当… 弱音みたいに聞こえンのは、気のせいなのか、 それとも。 「でもイけねぇことはねェだろうよ、突っ込んどきゃァ、なんとか…」 「終わったッて言う感想しか持てねェセックスがよ、普通のセックスだとは思いたくねぇ」 「?どうしたってん……!ぅッ!」 ギリ、と音がしそうなほど。 首筋に牙が食い込む。 どうやら、セイバーのヤツ、相当… だから、って、俺に当たる、なよ… 「ッてェ…セイバー!」 牙が抜かれた首筋に。 痛みと赤い筋が残る。 痛みをこらえた俺の息は微かに荒くて… 「理屈、なんてどうでもいいからよ…気持ちよくなろうぜ」 抱きついてるセイバーの、 俺の胸に回した腕に。 舌を這わせた。 香水の、甘い匂い。 コイツ、いつも香水つけてたっけ? むせ返りそうなほどの、強い匂い。 首筋に、もう一度線を引かれて。 「…ッ、あァ…そ、ッから、耳の、方…」 「こう、か?」 細い濡れた線が俺の耳元から、輪郭をなぞって。 「ン…ぅうッ…」 ピチャ、と、耳元に、唾液の音。 その音で、俺ゾクゾクきちまって、なんか変態みてェじゃねェかよ… でも、 もうちょっと、 強く… 「セイバー…噛みついてもイイぜ…」 「素直に噛んでくれと言ったらどうだ?」 「…じ、らすな…殴るぞ」 「フン…」 ゆっくりと。 耳朶に歯の当てられる感触。 一瞬の間を置いて、その歯が軽く立てられた。 「……ッ…!!」 身体が、震えて。 思わず咽喉を反らした。 俺を抱き締めている腕に手をかけて、力任せに外して。 振り向き様、睨みつけた。 目に、力なんか、入りゃ…しねェ、けど。 「…脱ぎやがれ!」 「あ?山崎?…なんだ突然」 「うるせー!…座れ、イイから座れッ!」 俺の、剣幕に。 セイバーがなんだ?という顔をして、絨毯に腰をついた。 屈み込んで膝に手をかけて。 「…山崎?」 「…黙れよ…」 身体中、熱くて。 まるで、ヤバイ薬でもヤッたか…まさに、そんな感覚で。 「…ン」 ベルトもボタンも無造作に外して、舌先でソイツを舐め上げた。 「おい、山崎…っ」 「…いーじゃ、ねぇか、たまには…ドコ、舐めたら感じるよ?」 「…もうちょっと下だ」 「…ココか?」 舌先で、言われた場所を軽く突付く。 く、とセイバーの息が詰まるのが聞こえて。 ソレが何度も聞こえるように。 何度も聞き返した。どこがイイのか、もっと、教えてくれよ…。 口に入りきらないソレを、唇で挟むように舐め上げる。 気持ち、良さそうだな… なぁ。 「そろそろ…なぁ、セイバー…」 「…ッ、なんだ」 「…イイだろ?コレ、俺ン中に…」 フ、と笑うのが見えて。 クソ。 笑うなよ。 意地の、悪いヤツ。 でも、その笑い。 肯定だろ? 服を脱ぎ捨てて。 セイバーの上に馬乗りになる。 「山崎?随分と、積極的じゃねぇか」 「…るせぇ…」 ご無沙汰だったわけでも、なんでもねェ。 溜まってた訳でもねェ。 なんかよ。 分かるんだよな… ゆっくりと腰を落として。 …身体の中を割って… 「くぅ…ッ…」 「まだ入ってねぇぞ?」 「…っぁ…だ、ってよ…」 腰に掛けようとしたセイバーの手を軽く払って。 その意地が悪い笑みに俺は逆に笑いかける。 片目、閉じちゃってんのは、苦しいんだ、見逃せよ… やっとのことで、 腰を下げて。 息、できねぇよ… 目を開いて、ヤツの顔を見たら。 俺をじっと見てた。 「…ン…なぁ…セイバー」 セイバーが目を上げて、俺の顔を見る。 「気持ちよくなりてェのは、皆、一緒だぜ…」 「…」 セイバーの様子を、伺いながら。 こんなやり方、慣れちゃいねぇけど。 「…俺、だって、オメーだって、よぉ…っあ…スゲ…」 「動けよ、山崎…」 「…ン…ぁ…、ッ…スゲェ…奥、まで…ッ」 身体を下げ切ると、脳天まで貫かれそうな… 「なぁ、…ッこの感覚。俺だけじゃねぇ、オメーも…感じて、くれよぉ」 「やけに…煽るじゃねぇか」 「煽ってんだ…バカヤロ…」 動けなくなっちまって。 腰を押しつけたまま止まってる俺に焦れたのか… セイバーが身体を起こした。 「…俺、動けねぇ…良すぎ…」 「人を煽って置いて自分が煽られていれば世話はねェな?」 起きあがったセイバーに。 そのまま身体を押し倒されて。 「して、くれんの?」 「なにを?だ?」 「…気持ちいーセックスってヤツをよ」 「欲しければな」 「欲しいンだよ…もッと突き刺せよ、死んでもイイってくらい」 「コレだ…だからからオマエが抱きたくなる」 馬鹿野郎。 だから、オメエに頼んでんじゃねぇか。 わかるんだよ。 イキてぇって気持ち。 俺だってお前だって。イキてェんだ、当たり前だ、良くなけりゃこんなことしねェ。 惰性 義務 保身 そんなセックス、したかねぇよ。 どうも、俺達は求めるものが高級過ぎるようだよな…? 肌が、汗で湿って冷たく感じて。 それを温めようとして身体をすりつけた。 後ろで熱く擦れる快楽の渦。 持って行かれそうで、思わずセイバーに手を伸ばした。 その手を掴まれて、身体を起こされる。 「ふぅ、うあ…ッ…や、ベ、俺、イキそ…ぉ」 「いい、ぞ、イッても…」 「な、なァ。お前、イキ、そうなら…」 苦し紛れに、セイバーの頬を両手で挟んだ。 突き上げを食らって身体が強張って震える。 「ま、待て…ン、あアッ!!」 もう一度、強く突き上げられて。 セイバーの首筋に爪を立てながら、俺は我慢し切れずに… 「…ァ……ッーーーー!!!」 駄目だ。 多分、もう駄目だよなァ… オメェしか、感じられねぇ、なんてよ。 オメェとしか、気持ち良くねぇ、なんてよぉ。 本当に、ワガママな、身体にされちまった、よなァ… 歯を食いしばっていた俺の様子が落ちつくまで、セイバーは動きを止めてじっと見ていた。 その、赤い舌先がチロリと唇を湿らせている。 「…ハァ、は…ッ…セイバー…」 どうせならよぉ。 もうちょっと、スゴイ事しようぜ? お前がゾクゾク来てもっと高級になっちまうような。 「…もしイキそうならよ…飲ませてみねェ…?俺に」 「…お前がよけりゃ願ってもねぇ」 「やらしーコトは大歓迎だろ?気持ちよけりゃなおさらだ」 俺の中に入ってたソレに舌を這わせて。 ちょっとだけ、激しく責めてみた。 最終的には頭掴まれてよ、無理矢理押しこまれるのがオチだろうがな… いーじゃねぇか。 それでも。 世間じゃコレを『好きもの』とか『淫乱』ッて言うのか? ハ。そうなりたくて仕方がねぇヤツの戯言じゃねぇか。 綺麗事じゃねぇ。 身体の関係じゃなきゃ、誤魔化せねぇ、掻き消せねぇモンがある。 セイバーにもそれがある。 俺にも。 「うー」 セイバーが満足そうに背伸びなんかしてる横で。 俺はヘタって伸びてた。 メマイまで、しやがる。 「どーした山崎?」 「…あのなァ…」 「あん?」 「…だれが3回もやってイイって言ったよ…」 さてな? と、セイバーが首を傾げてにやりと笑う。 あーあ、後は、コイツの体力についていけるかどうかだよなァ。 思わず、苦笑いが漏れた。 そのまま、メマイに誘われて、眠ってしまいそうな… くらくらとした気持ちのいいメマイに。 流されて、深く落ちる。 全て掻き消す事の出来る、危険な快楽。 ソレに餓えてるヤツラよりも、 腹を膨らませた経験のあるヤツラのほうが数段危険だよなぁ? もうソレ以外じゃ掻き消せなくなる。 だからもうソレ以外じゃ掻き消せない。 そう、まさに、麻薬……だぜ、なァ… |