「…ッ、ち…」

なんだよ…
指先が疼く。
違う。
もっと奥のほう。
ヤバイぜマジで…
コレじゃ、俺ってばまるで欲求不満…。

これから、この部屋にクリードがくることになってる。
なんかよ、高級ホテルの一室、なじまねぇ。
ちょろちょろとヤクのルート作りながら動き回ってた俺を、
ラブホテル街の横辻まで追ってきて、今日の約束取り付けてよ。
オッサンも、熱心だよな。
最近じゃそんな感じでめっきり体の関係。
欲望ってのは果てがないのかね、快楽に関してはコトこのうえねぇ。
よく、どっかの飢えた団地妻が若い男の誘惑に負けて
快楽の虜になるような小説とかってあるよな。
そんでよ、普通のセックスだったのがSMとかアナルセックスとか、
果ては異物挿入?とかまで発展すんのな。
知り合いにアダルトビデオの監督がいるけどよ、前にそんなの撮ってたな…

ちょっと待て、俺今それか?

…考えンのやめよー…


遅いな。

当たりまえみてぇに時間に遅れてきたってのに、クリードのやつはまだ来ていなかった。
いつもだったら、臨戦態勢(笑)で待ってンのによ。

指先、ジリジリすんなぁ…
刺激がほしくて、疼いてる。
いつの間に、こんな体になったんだよ。





「…ん」

…!
な、何やってんだ、俺…
マズイってばよ…
とまんねぇ…
指先の刺激が、自らの下半身に移動していく様を片目で見る。
だめだ、って、何やってん…
服の上から、そこをなぞる。
体が待っていた感触に、血潮が駆け巡るような感覚が走った。
「…あ、ッ」
止めてくれよ…。
こんなんじゃ、なかった筈
下からなぞりあげて。
そのまま、服のすそから手を入れる。
指先の線の刺激…、足りない、それじゃ足りない。
もっと熱く…
「は、や、やべぇ、…ッ…ウソ、だろ…」
絨毯に座り込んで。
体、立たねぇ

指先に絡まるのは俺の粘液。
その柔らかさを使って、握りあげた。
「…ッはぁッ!」
唇を噛んで。
このまま、自分でしちまおうかなぁ…
一度、抜いとかねぇと多分この状態じゃ、された時エライ事になりそうな気も…

…そんなの、ただの理由だ

もう片方の人差し指、第二間接に歯を立てた。
右手の動きはもう止まらない。
「は、あっ、ん、う」
駄目だ、駄目だってばよぉ。
やらしーって
イきそ…

ピロロロロロロロ

「…ッ!?」
俺のシャツ左胸ポケットから、突然の音と振動。
その感触にさえ、体に響き渡って、馬鹿みたいだけどイキそうになっちまった。
さすがにそれは精神力で抑えて。
咥えていた左手を胸ポケットに移動する。



「誰、だよ」
…すまん
「クリード?」

そう、相手はクリード。
なんだか情けない声で電話してやがる。
俺、右手こんなトコ掴んだまま、
…善いか、見えないし

「遅いじゃねぇか」
『…だから、スマン!仕事が押してもう少し遅れそうなんだ…待てるか?』
「んっ」
『…山崎?』
「なんでもねぇよ」

そっか、仕事か。
そんなの弾いて、俺優先にしろよ。
待ってんだぞ、この俺が。
しかも、
待ちきれなくてこんなことまでして。
壊れてるよなぁ…

「もう少し、ってどれくらいよ」
『…わからん』
「俺を待たせるつもりか?上等…っんぅ」
『…山崎?な、なん…』
「ぁ…はッ」
『……』
「…ッ、あ、いや、なんでもねぇ」

電話の向こうの含むような声。
俺の指、びしょ濡れ。
ドロドロで、多分身体の奥から、欲望があふれ出してる
だってさっきイキ損ねて…ただでさえヤバかったのによ…

『指か』
「…」
『だいぶキているようだな』
「…っせぇ」

もう、やめよ…
いい加減にしないと、俺このまま、ぶっ壊れる
早いトコ、指はずして…
シャワーでも浴びれば

『イってみろ』
「…な!」

ゾクリ。
そんな、こと言うなよ!
思わず、期待しそうに

『握った後、親指だけ先に当てて、』
「…」
『小指から人差し指のほうへ一本ずつ握ってみろよ』
「…何、言ってんだよ…んんっ!」

やば…

『…そんなに欲しかったのか』
「し、らねぇ…よ、馬鹿」
『フン…。まさかマスターベーションとはな』
「うるせぇ!してねぇ、してねーよそんなモン!」

指をはずそうとして。
後ろの疼きに気づいた。
本気で…
一度イかねーとマズイ…

「…わーったよ、待ってッからさっさと…」
『イってみせろと言ってるんだ』
「…電話で、かよ」
『さみしいか?』

声が、笑ってやがる。

「るせー…」

指、とまんねぇし

『指は入れているのか』
「んや、まだ…」
『そのまま、待っていろ』
「え?」
『そうだな、イクなよ』
「なんだよ、イケって言ってみたりイクなっつってみたり!」

かちゃ。

「…!!!!!!」

ドアがおもむろに開いて。
さすがにびびった俺は携帯を取り落とした。
『どうした?山崎』
携帯から、声が聞こえてる。
扉の開いた向こうで、笑う男。
「大変なことになってるな」
…わら、ってンじゃねーよ、変態オヤジ…!




クリードはそのまま、無抵抗の俺を床に押し倒して。
そりゃもう、焦らして。
足持ち上げたくせに、指でちょっと探るだけで入れねーし
俺、やばいくらい乱れちまって…
根元のほう指で握ったまま、イかないように締め付けて、
そのくせ、舌先で俺のソコを激しく攻める。
俺はもう声なんか出ない、無理、何も見えない、死にそう、で
苦しい
締め上げたまま、後ろにゆっくりと差し込まれて…。
「ーーーー!!!」
息が、しずれぇ…。
酸素を求めて喘ぐ俺の口元、品定めするように目を細めて見下ろす
指を外して欲しくて、もうイキたくて辛くて苦しくて、
指を外そうともがいても…
「俺がイったらイかせてやる」
…そんなン待ってたら、狂っちまうよ…!

爪、立てて

仰け反って

完全にぶち壊れた






シャワーの雨の中、涙らしきものをぬぐった。
…壊れちまったよ。
多分、もう戻れない。
そのうち、本当に体だけになる?
求めた俺がいけなかったのか?
…制御できなくなるのはいつだ?
もう、そろそろ駄目になってるのかも。

「…馬っ鹿野郎…溜まってただけだ…くっそ」

なんで。
どうして俺はあんなこと。
自分でしただなんて、しかも実況中継しちまって。
壊れてるって絶対。
終わりに出来ない、でもしなきゃ壊れる。

「…ウソ、だよなぁ……」

もう一度、自分のソコに触ってみた。

「ん…」

信じられないくらい、体が波打つ。

「何で、こんなんなっちまったんだよ…」
「クスリ盛ったからなんだがな」
「…」

え?

みると、シャワー室の扉が開いていて。
クリードがソコから俺の裸身を舐めるように見ていた。
両手に水を受けて、それを片手で弾いてぶっ掛けてやる。
「なんだと!?」
「クスリ。部屋に充満するように、空調に仕掛けておいた」
「…テ、テ、テ、テメェーーーーー!!!」

胸倉を掴もうとして、上半身裸のクリードのどこ掴んでいいかわからなくて、
おもむろに。

「…ぎ!!!」

クリードのいつも元気で俺をいたぶってくれるアレに爪を立てた。
「テメー死ぬかこのやろう!悩んじまったじゃねぇか柄にもなくーーーー!!!!」
この怒り収まるわけがねぇ!
俺はな、マジで悩んだんだぞ!
本気で俺どうかしちまったんじゃないかって、
怖くて、
胸苦しくなるくれぇ、
あ、
まだ、残ってるくれぇ…

「責任、取れよ」

俺の握力に目を見開いてるクリードに、舌を突き出した。
信じられねぇ、コイツ。
どこまでしてよくて、どこまでして悪いのか、教えてやる。
俺は、飢えた団地妻でもなんでもねぇ。
クスリなんて使いやがって…!

まぁ、ちみっと安心はしたけど…

宣戦布告なんかしちまって、後悔するのは俺だってコト、そろそろ俺も学習したほうがイイかね…
クリードもなんか、やたらと謝って来るし、
なんかその姿、おっかしくって、そんな姿、見たいとは思わねぇし。
でも謝りながらヤってるし。
吹っ飛びかけた頭で思ったよ。
こいつ、ガキもみてえだなあ。って。
色々してみたくてタマラネェのな。
俺なら許してくれると思ってるのか?保護者じゃねーっての。

騙まし討ちは、俺の範囲だったんだけどなぁ。

あれ?っつーと、俺もガキみてぇ。
なんだよ、2人してガキか。

こりゃ、手におえねぇ訳だよなぁ。
でもまぁ、ひとつわかったぜ。
悩むことなんて、ねえな、ってコト。




そー。言ったろ?
そん時は、そん時。




そう、そん時…だから、今はよぉ…