「するか?」
そう聞かれたから、戯れに抱かれてやっただけだ。
実のところ、誘われたとき相当溜まってた。
だからまぁ男でもイイや、抱いてみるかと思っただけなんだがナァ…
何でコイツは俺を組み伏せてんだ全く。
「おいテリー…」
聞く耳を持たずといった顔で、俺の顎を掴んでいる。
「コラ」
ちょっとドスの聞いた声を出してやる。
しかし、別段相手にされず、屈み込んできた顔に顎を舐められる。
「お前は、するって言ったろ?山崎」
ああ、確かに言ったよ。
だけどなァ…
「なんで俺が抱かれなきゃなんねぇんだよ」
「たまにはイイだろ」
「…だってよぉ…男同士でされる側ってのは…突っ込まれるわけだろ?」
「ご名答」
そう言いながら、顎から俺の唇の方に舌を這わせる。
俺にしたら前戯なんてどうでもいい。
されたとしても、たいしていい物じゃなかったと言う記憶がある。
面倒だよな、女にわざわざしてやってよ、俺にはなんの見返りもなし、ただ後は突っ込むだけ。
面倒になって最近ご無沙汰だったのは事実だ。
「されたことはないのか?」
躊躇なくテリーが問い掛ける。
アホか。聞くな。頭が痛くなりかけて、大きなため息をついて見せる。
「それ演技だろ?それなんだよな。」
「あ?」
「相手に伝えるには、本心だけでなく伝える手段が必要ってコト」
なんの話だ?
そんな話してたっけか俺?俺なんかボケてるのか?
当たり前な顔をして言い放つテリーに、逆に自分を疑う。
困惑していると、するりとシャツの下から手をいれて俺の胸の一部に指をかける。
「本当に抱く気かよオイ?」
「もしイヤになったら俺をふっ飛ばすことなんてアンタには簡単だろう?」
「埃みてぇなモンだな」
「ヘ、言ってくれるぜ…んじゃ、ちょっとの間黙っててくれないか」
「……喋ってちゃ出来ないのかよ…」
ぶつくさ言う俺が口を閉じて天井を仰ぐと、それを了承と受け取ったのか、テリーが口付けてきた。
男の唇ってのはいただけねぇ。
固くってあんまり…いいもんじゃ…ねぇ…
唇に当たったのはぬるりとした感触。気色悪くなってその主を確かめる。
テリーの舌が俺の唇をなぞる。
押入ってくる舌を、止めようとしたが…
俺がやめさせようとしたのに気づいたのか、鼻で笑われる。
……それも悔しいので、入ってくる舌を迎え入れてやった。譲歩ってヤツだ。
譲歩だぞ。
ぬめる舌が口の中を掻き回す。妙な動物に口の中に寄生されたみたいだ。
上顎から、舌先でなぞり始める。
上顎の奥のほうをなぞられた瞬間、俺の背筋に何か走った。
小さな含み笑いを聞く。俺は今、一瞬でも動いたか。
何もなかったような顔をして、テリーの顔がそこから離れ、胸元に運ばれる。
「山崎…真似事は…必要だぜ」
「何?」
「声を上げるフリをしてくれないか?」
「阿呆かテメェは…男にされて、なんで俺が声を…。」
「上げたら乱れちゃいそうで怖いってか?」
こうやって俺をわざと誘導する気だな。
その手に乗るか。しかしむかつく。俺がそれに耐えられないみてぇな言い方じゃねぇか。
今までの戦歴を知らねぇな?
しかし、ここでノったら、俺って…いや…どうなんだろう…な…
テリーの指が俺の胸の一部を摘み上げ、そのまま唇が寄せられた。
さっき口の中にされたときと同じ感覚。
くるくると押しつけられるように。
自分の胸の上下に、一瞬気を取られる。
なんで俺はこんなに深く息をしてるんだ?
顔の位置を動かさず、愛撫を続けたまま、テリーの手元だけが移動する。
ベルトが開く音がする。
俺は何も言わなかった。否定しないと言うコトは肯定していると言うことだと聞いた。
俺は肯定したつもりもない、ただ興味が…イイじゃねぇか別に。
指が俺のそこを絡め取るように探る。
「やっぱ反応無しか?」
「この程度で勃ったら俺はホモだろうが」
「ふーん…んじゃ」
不意に、テリーが動いた。
目の前から突然消える頭部を見失う。
ぞくり。
俺の、「反応していない」と判断された其処に。
口付けられ、一瞬息が詰る。
「テメェ!な、何を…!」
女の口ならともかく、男にそんなところ咥えられるってのは想像を絶する。
イヤそもそも、なんで俺はコイツに抱かれてるんだ。
殴り飛ばしちまえば終わる…
「…っ」
咥えこまれるのが分かる。口の中の感触は男も女も一緒だ…
ぬるりとした感触と、締めつける指の流れ。
思わず口元に手をやる。
別に声が出そうになったわけじゃねぇ…喘ぐように開いちまった唇を見られたくなかっただけだ。
テリーの口が其処から一瞬離れる。
「真似事が欲しいな。山崎。フリでいいんだ、フリで。」
それだけ言って、もう1度刺激を与えるべく、沈み込む。
俺の其処はもうすでに反応し始めていた。
この程度だったら、いくらでも止められるはずなのに。
きっと溜まってたせいだ…じゃなきゃこんなにイイ訳がねぇ。
「…っぅ…」
先端を喉の奥で締められながら、抜き取られるように動かされる。
脳天に熱いものが突き抜ける。
「…っはッ!」
突然の後ろからの異物感に驚愕した。
テリーの指が、俺のそっちに…冗談じゃねぇ!
なんでそんなトコ…
いや、なんで、も、何もないだろうけど…だってよぉ!
「テ、リー…ッ!指、指抜けッ!」
「食わず嫌いってのは勿体ねぇよ。あ、もう、もしかしてギブアップ?」
「…テメェ…、っん…ッツ!」
「そうそう、もっと感じるフリしてくれよ。もうちょっと、声上げて」
コイツの含み笑いを聞くたびに、反抗心が沸き起こる。
しかし、コレに反抗すると言うコトは、コレに耐えると言う…
「ッあぅ!」
中に入っていた指を深く刺しこまれ、奥の部分に触れられた途端に、つい声が漏れた。
慌てて口を塞ぐ。
「フリなんだから…照れなくっていいんだって」
俺の顔を下から見上げながら、生意気にも笑う。
その間も始終中で動きつづける指。
痛いような、むずがゆいような。其処から胸、胸から脳天までじりじりと神経が侵される。
空いた片方の腕が、俺の屹立したものを握り上げる。
その裏側を擦るように中で捩れる指。
駄目だ、なんかしらねぇが熱い。駄目だ。コイツを引き剥がさなきゃ。
熱い。
イキてぇ…よ…くそッ…。
青い瞳がじっと俺を見ている。
俺は快感に喘いでなんかいない、いないんだ、こんな事でイキそうになったりなんか。
「小さいけどな…本気で声出てるぜ」
………もう……駄目だ…

多分俺はそのままイかされたんだと思う。
脱落感と、喘いでいる自分の喉の奥の乾燥。
引っ付きそうな息にむせそうになりながら、テリーの愛撫に身悶えている自分がいた。
「イイ演技だぜ…俺がそそられちまう」
分かっていて言ってやがる、コイツは。俺をこんなに情けねぇ状態にしといて。
テリーのソレがねじ込まれたときは、快感と言うより絶望と苦痛に喘いだ。
耳元で何度も囁かれる。
なにを言われているのか理解さえ出来ない。
脳が沸騰して目がちらつく。
すがり付きたくなる腕をなんとか押さえる。
跳ね除けちまえばイイのに。
そうすればこの恥ずかしい行為を終結させられるのに。
「俺をもっと誘って…そうすればもっと気持ちよくなれるから…な」
元々誘ってなんかいねぇ…俺はただ…
普通のセックスに飽きてただけだ…突っ込むだけの…つまらねぇ…寂しい行為に。
こんなガキに抱かれて、なにやってんだ俺は…
テリーが不意に動きを止めた。
躍動する感覚が、少しずつ治まってくる。
じりじりとした感触だけが残り、意識が鮮明になってくる。
「山崎。お前抱かれたことないの?」
「……」
「誰に?」
1度だけな。1度だけあったよ。
もう抱かれることは出来ねぇけどな。
言葉に詰って目を閉じる。
「気持ちよかったか?それは。」
「……お前より…数倍よかったぜ」
皮肉のつもりで、上ずったままの声で答えてやる。
しかし、嘘じゃねぇ。数倍よかった。気がする。
テリーはしばらくじっと俺の顔を見ていた。動かずに見ていた。
ややあって。
「良かったな。」
そう言って笑われる。侮蔑ではない。安心したように笑う笑顔。
な、なんなんだよ。俺が緊張しちまうじゃねぇかよ。

なんとなくな、そのまま抱かれてやった。
誘ったのは俺じゃねぇ。向こうが誘ってきて、気が向いたから相手してやったんだ。
強がりじゃねぇ。寂しかったわけでもねぇ。
気が向いたんだ。
俺の中の消えちまった空白は、空白にして置きたいんだ。
わからねぇだろうな。誰にも。分からせるつもりもない。分かられても困る。

大切な。俺の一番尊敬するあの人は。
誰に代えられるもんじゃねぇ。
しかし俺は始めてあの人の言葉を理解した。
「どうせヤるなら気持ちイイほうがイイ。」
そう言ってた。
当たり前だと思った。
その時は。
でも結構気持ちイイもんでもなかった。面倒だったし、疲れるし。
あの人に抱かれたときは気持ち良かったなァ。

思いを巡らす。
テリーが俺を見ていた。
眠っているのかと思ったのに。
そんで言いやがった。
「どうせやるなら、気持ちイイほうがイイだろ?」

……馬鹿野郎………




FIN
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ん〜なんてーかな。
誰だよコレ(笑
こんな素直な山崎どこ探してもいないね。
つぅか誰だよコレ(しつこい
幸せ路線でもなんでもないんだけど、
なんか書いてたらこうなった。不思議だね。
アレって気持ちイイもんじゃない。アタシはそう思ってる。
ただ、お互いそうしたいときなら気持ちよくなれる。そう思ってる。
それを書きたかったのかもしれない。多分突発的に。
でもなにも考えて書いてない。やっぱり馬鹿だアタシ(笑