ご近所ジョジョ物語
第6話・傷
                       

ホルホースとミドラー。お互い黙ったまま、暗闇に染められていく。
ミドラーが、意を決してなにか言おうとしたその瞬間。


ホルホース:運命か・・・・。


そうつぶやくと、ミドラーを促す。
おろおろしているミドラーをせかす。


ホルホース:もう始まっちまってるんだ・・。
      アンタも。俺も・・そしてアイツも・・。
 ミドラー:な・・何が・・・?
ホルホース:とりあえずその木陰へ・・。


公園内で一番大きな木。その木の後ろへ隠れる。


 ミドラー:ど・・どうしたって言うのよ
ホルホース:デーボだよ
 ミドラー:えっ!?
ホルホース:あそこから来てる
 

小さく指でさされたほうを見ると、うっすらとした人影が、
明かりに照らし出されている。
ロングコートに、長い髪。
デーボだ。


 ミドラー:・・・・・・・
ホルホース:どうしたい?
 ミドラー:やるわよ
ホルホース:・・・・わかってるさ・・・・・。
 ミドラー:やるんだから・・。
ホルホース:・・・ミドラー?
 ミドラー:恋だの愛だの、くだらないわ。私はそれを超えて見せる
ホルホース:・・・・・好きにしな・・・
 ミドラー:いままでもそうだったし、これからもよ!
ホルホース:・・・・
 ミドラー:そうよ、これからもよ。アンタにも、誰にも、指図は受けないわ!
ホルホース:・・・・ん?・・


ふと見ると、デーボに近づく女。さっきのデパートの女の子だ!!
うずくまったデーボの背をさすっている。


ホルホース:・・・・やりにくいな・・・・


小さくつぶやく。
だが、それがまた一つの打開策である事も、ホルホースは見逃さなかった。
いまなら・・・あるいは・・。


ホルホース:ミドラー。俺は反対側に回る。
 ミドラー:わかった
ホルホース:あんたがこれから見るもの。それが真実かもな。


そう言い残して、消える。
気配と共に、ホルホースの姿が消えた。
下唇を噛むミドラー。真実。私にそれを見ろと言ったの?


 ミドラー:見てるわよ、真実なら、この目でしっかり・・・・。


弱弱しく言葉を重ねる。
そうして、鈴とデーボを睨む。


 ミドラー:標的。標的よ・・・。


不意に顔つきが変わる。
獲物を狙う獣の瞳。
たとえそれが言い訳であっても、睨むことをやめることは出来ない。
鈴が離れる。デーボがこちらの殺気に気付いた様だ。


 ミドラー:やっと気付いたのね・・・お馬鹿さん・・。


そう言ってにっと笑った。
自分でも恐ろしい顔だと思うその笑みで。


 ミドラー:ハイプリエステス!


スタンドがゆらりと現れる。
デーボの呼びかけに答える。
これから狩られる獲物にその姿をあらわす。

   
   デーボ:なんのつもりだ
  ミドラー:・・・・・・・・
   デーボ:・・・なぜそこにいる
  ミドラー:良く気付いたわね。


その木の影からふらりと現れるミドラー。
ハイプリエステスが肩の上をゆらゆらとゆれている。


  デーボ:あんた、さっきの・・・。
 ミドラー:こんばんわ。
  デーボ:なぜ隠れていた?


思わず笑みがこぼれる。楽しいのか、恐ろしいのか、
ただ笑みがこぼれる。
構えるデーボのスタンドに、気持ちが沸いた。


息を大きくすって、ハイプリエステスをデーボに急接近させる!
分かっている。これはおとりよ。後はあいつがやってくれるわ。
わかっている!もう私は変わったのよ・・・・・・・!!!!


エボニーデビルがハイプリエステスを叩き落そうとしたその瞬間。


デーボ:・・・・ぐゥッ・・・!!


デーボの膝下から、血が噴出す。
がくりと膝を折るデーボ・・。


同時に、何か聞こえた。
鈴・・。の、声が・・。


  ミドラー:・・・・どうして・・・っ・・。


なんだか分からないが悔しかった。
しとめる寸前なのに。
  

  ミドラー:はぁッ!!


ハイプリエステスを鈴を妨害する形に配置する。
身動きが取れなくなる鈴。デーボの名を呼んでいる。


  ミドラー:うるさい・・聞きたくなイッ!!


殺してしまいたくなるほどその声がうるさい。
睨みつける。血がにじみそうなほどに。
ホルホースが姿をあらわす。
にらみ合うデーボとホルホース。


ホルホース:どうするね。ミドラー?
 ミドラー:いいからヤって。
ホルホース:アイアイサー・・・・・・。


ホルホースが、デーボの頭にエンペラーを押し付ける。
動かないデーボ。鈴の叫び声。


ミドラーがぶつぶつとつぶやいている。
誰にも聞こえない様に、自分に言い聞かせる様に。

 ミドラー:うるさい・・。あの娘うるさいわ・・。
      なんだって言うのよ、私の邪魔をして・・。
      なにが恋よ。傷つけられるのがオチよ。自分が消えるのがオチよ。
      自分を守る、このことが大切なのよ。
      それが出来なきゃ何も始まらないのよ。
      面倒だわ。
      そうよ。もっと自分を大切にすべきよ。
      馬鹿だわ、愛だの恋だの。
      妄想よ。ありえないわ。
      みんな、夢を見過ぎなのよ。
      私が正しいのよ。ホルホースだって、あの子だって
      殺し屋に置いては、私に感謝すべきよ!
      愛してるなんてこの世で本気で言えるはずが・・・・・・



     鈴:鈴は貴方を愛しています、デーボ様・・・・っ!!!
  ミドラー:・・・・・・・!!!! 


自分のすべてを、否定される感覚・・・・!!
うそ。うそに決まっている。なんであの声はこんなにも響くんだろう。
聞こえないはずのその言葉はどうして聞こえてしまうんだろう。
この、心に・・。
鈴がミドラーに、静かにこう言う。
そしてそれは精神の声へ・・。


    鈴:どうしてデーボ様を・・・
 ミドラー:あんたが傷つくわけじゃないでしょ!
    鈴:私も痛いです!
 ミドラー:痛くないわよ!
    鈴:私も苦しいです!!
 ミドラー:どうしてよ!
    鈴:好きだからです!
 ミドラー:どうしてそんなこと言うのヨォーーーーーーーーーッ!!


涙が溢れて止まらなくなるミドラー。


 ミドラー:どうしてッ、どうしてーッ・・うえ・えッ、
      わかんないよぅ、わからないよぉ。
      アタシはどうしたら良いの?
      わからないよぅ・・・・


ホルホースと鈴の視線が痛い。
こんなとき、誰に頼れば良かったんだろう。
そんな疑問が不意に浮かぶ。
自分は、自分が頼るものを持っているわけがない。
そう言う言葉が渦巻く。
わかっていた。そんなことは。
だれか・・・・・


 ミドラー:ホルホース・・助けて・・・・・


苦し紛れにその名を呼ぶ。
泣き顔のまま、ホルホースを見る・・・


  ミドラー:・・・・・・・・ッきゃァァァァァァァァァッ?!!!


デーボを背に、ホルホースがゆっくりと崩れ折れる。
なぜ。なにが?何が起こっているのか分からない。
パニックした頭に、鈴の悲鳴が響く。



さらに赤いものが、地面に広がるのが見えた。


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