★下衆★
「……!!!」
「驚くほどのことじゃねぇだろう?」
コイツは、狂ってるのか?
いつもと確かに様子が違う。
俺の刀を冒涜した時から、既に。
膝をつく俺の目の前に、その嘲った表情が下りてきた。
「どんな気分だ?」
「死ねや」
「黙んな」
振りあがった腕にビクンとして目を閉じた。
せせら笑う声と、俺の首を掴む指。
咽元に、強く食いこむ。
「…ぐ…ッ…」
「キス、してやろうか?あの刀の前で。
 どんな声出させてやろうか。あの目の前で。なぁ?」

そう言って、ふと目を伏せて。
開いた目が、もう1度無理やり俺を嘲った。
様子が、おかしい。
首を掴んでいた指が緩んで、俺の前を完全に破り、さらけ出す。
其処を開き、顔を埋められ。
舌が這う感触は、俺の感覚を麻痺させるか?
そんな、筈…
「…ッ…やめろ…やめ…」
俺の声に聞く耳も持たず。
掲げられた俺の腕の内側に、指が走る。
わざと、煽るように。
「…ンッ……!」
「感じてんじゃねぇか。」
「んなワケあるか……テメェの何で…感じろってんだ?」
それに答える声はなくて、行為で答えを与えられる。
ついばむキスが、だんだんと下へ降りていく。
ベルトを引く音。
「フン…。」
ボンチューが俺のベルトを見て、鼻を鳴らした。
面倒くさそうに俺を見る。
ベルトの金具の部分を手にして。
その手が振りあがる…!
「……ッあぅ…!?」

強い衝撃が、脇腹に走る。

「…イイ顔、すんなぁ…お前はよ。マミーにもそうやってイイ顔すんのか?
 勝也にも、そんな顔で抱かれてんのか。トニーとはもうヤったのか?」
「な…何を…!」

皮が肌を打つ鋭い音が響く。
「…痛…ぅッ…あ!!!」

「淫売か、手前は。」
「口が…過ぎるぞッ!…」
「過ぎる口も事実ならな…」

強い衝撃が何度も縦横無尽に身体を切り裂く。
痛みなのか、熱さなのか。
既に皮膚がそれを区別できなくなった頃。
ボンチューが俺の前に屈み込んで血の滲む傷口に、爪を立てた。

「ィ…ぅ…ッ…!!!」
そむけた顔に、一筋の汗が落ちるのを感じ、痛みが、身体を支配する。
熱さが、自分のすべてとなる。
引き寄せられて首元で。
「苦しめ…」
「か…は…ッ…」
食いちぎられるのは俺の咽喉か?
痛い。すべてが。なんで、こんな、なんでこんな目に…
刀が、俺を、見ているよぉ…。
俺は、もうアレを、握れなく、なって…しまう…?

助けて。誰に?誰に求める?
逃げられないのなら、逆らえ。噛みつけ、叫べ…

痛みに、恐怖に、自分が負けないうちに…!!!


◎■下衆・3

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