★饒舌な人形★
風呂に入って頭を抱えた。
アソコに置いてきた、アイツはどうしてるだろう。
俺は何をしたんだ。
いつもそうだ、アイツは俺のものだから、
それが当たり前だから、別に気にするコトはない筈だ。
湯を、頭からぶっ掛けてみる。
「ぼたんの野郎…くそ…」
なんで、そんな言葉が漏れたのか。
俺がアイツを憎む理由なんかないだろ?
ムカツク。
ぼたんが、ムカツクんだ。
なんで、俺がこんな気持ちになるんだ。
だから、ムカツクんだ。

なんで、あんな声、出したんだ!

俺が気晴らしに耳を触ってやった指に。
高く細い声を出して。
そのまま。

「逃げたも同じだよな…」

そうさ。
あんなところで、気絶しやがって。
問い詰める暇もなかったじゃねぇか!
なんなんだよ、あの声は。
なんで、そんな声だすんだよ。

俺を、煽りやがって。
ぼたんの分際で。
俺に、俺に戸惑いを与えるなんて。
ゆるさねぇ。

焼けつくような、痛みが。胸に起こる。
これはなんなのか、俺にはわからない。
だから、ぼたんに聞けば良い。
もう1度、いや。何度でも。
お前の声を聞いてやる。
そう、俺を暴走させたのは、俺じゃない、お前だ。
そう、決めつけた。
俺は、間違って…いるか?



風呂の湯煙が。
俺を閉ざせれば。
見えかけた心を曇らせて、塞いでしまえ。


風呂から上がって外を見る。
雨が、降っていた。
死にそうになる心に、無視を決めこもうとする。
雨だ。
よりによって、雨が。
掻き立てるつもりか、お前までも。
俺に、さらけ出せと言うのか…!




カタンと音を立てた扉を閉じて。
いつのまにか俺はここに戻ってきていた。
うずくまったまま動かない人影に、背中に冷たい汗を感じる。
「……ぼたん」
「…。」
ガタガタと震えながら、顔を上げるその姿に。
一瞬躊躇する。

「助けて…下さい……勝也さ…ッ」

何故、俺に、助けを求める?
俺は、お前をこうしたんだぞ?!
お前が、震えている理由は俺なんだろう!
なんで、なんでそれなのに…
「助けて…」
懇願と言うより、うわごとの様に繰り返す。

「…ふん、情けねぇザマだな、ぼたん」

俺は、なんでココまで逃げなければならない!?
心配になって、ココに来たんだろう、認めろ!
なんで、壊そうとする?!
抱け。抱きしめてやればいいんだ。
触りなれた金髪を、俺はまた掴んで。
引き倒した。

「…ッ…や……ッ、ッ…!!!」

俺を怖がるぼたん。
そうかよ、怖いかよ。
俺がそんなに怖いかよ!
一瞬でも、お前の上げた声に、性衝動を感じた自分は、
そうだろ?お前に取っちゃ独裁者だろ!?
泣け。怖がれ。俺を怖がって、すがりつけ。
欲しいだなんて思っちゃいない、
「お前しか付いて来てくれない」なんて、そんな風に思っちゃいない。
お前が俺について来る。
それが当たり前だ、そうだ、お前は俺の、奴隷なんだからな!
好きな様にされて、どんなに痛い目にあっても、
どんなに酷い目にあっても、俺にくっついてくるんだろうが。
ビクビクしながら。
俺に、絶対にくっついてくるんだろう?
分かってるから、俺が無茶をするんだ。
そうだ、お前のせいなんだ。
俺が、いま、震えるお前を抱きしめもせずに、こうやって開かせたのも。

精神が壊れた薄弱児の様に泣きじゃくるぼたんを足で踏みつけた。
「…う、ッ…許して…ッ下さい…俺、逃げません…!」
わかってるよ!
逃げないから、するんだ。
俺の息が、勝手に興奮状態になっている。
あがったまま、おさまらない。
俺が屈み込んで足を掴むと、悲鳴を上げて俺から逃れようとする。
フリを、する。
「逃げられるって思ってもいないくせに、そうやって誘うのかよ?え?」
「ち、違います…誘って…ないっ!そ、そんな、そんな、勝也さん、
 そんなに俺を苦しめて、楽しいですか…!?」
「楽しいね」

滑らかな肌に傷をつけて、爪が内腿をえぐる。
痛みに仰臥したまま、身体を固くさせる。
何故、そうやって、待つ?
俺を、そうやって、惑わせる!
奴隷だ、奴隷なんだ。お前は。
俺に対して奉仕していればいいんだ。だから、お前に与えられる快楽はない。
ない。
ないんだ。

広げさせた足を自分で支えさせる。
「離すな。殺すぞ」
「…っ…ひ…ッ…く…」
引きつる息をこらえてなんとか酸素を取りこむ音が。
更に俺を掻き立てる。
俺を、引きずり落とす。
何故、引きずり落とされることを拒む?…俺は何故。
抱きたい。
抱くという行為は、相手に快楽を与えようとすることだ。
俺が、何故、このぼたんにそれを与えねばならない?
こいつは、ただの俺の…

俺の……なんだってんだよ!

十分視線でいたぶってから、それからまた咥えさせた。
その必要はなかったんだ、そのまますれば良かったんだ。
どこかで気遣う俺がいる。
どこかでたぎる俺がいる。
大丈夫だ、怖がるな。
地獄を見せてやる。
たぎる俺の暴走に、引きずられて。髪をかきむしる。

無理に捩じ込んで、ぼたんの悲鳴を聞いた。
その噛みきった唇から血が一筋。
「ひ…ッぐ…ッ…勝也…さ…痛…ぃ…」
「当たり前だろ?無理やり入れたんだ。こうするともッと痛いだろ?」
細い身体を残酷に引き裂いて。
「お願い…しますぅッ!許して…もう…い、い…痛…ぁあああっ!」
快楽なんか、与えてやらねぇ。
かわいそうに、なんでこんなに苦しんでんだ。
かわいそうなんかじゃない。もっともっと苦しめ、罰だ。
なんの、罰だ?
痛いかよ。俺はちっとも気持ち良くねぇよ。
痛いかよ、ぼたんよぉ…

なんで俺は、与えられないんだよぉ。
なんでお前は、逃げないんだよぉ。

なんで、こんなにされてるのに、俺にすがるんだよぉ。

逃げないでくれ。
俺にすがってくれ。
俺を、見捨てたり、しないでくれ。

◎■饒舌な人形・4……勝也×ぼたん

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