★御所車★
香に迷う …梅が軒端(のきば)に匂い鳥 …
花に逢瀬を待つとせの
明けて嬉しき…懸想文(けそうぶみ)…



煙草に火をつけて。
くゆらせた煙を貴方が掴もうとした。
何を掴みたいのか。何が、欲しかったんでしょうねェ。
知らずの内に俺も掴もうとしていました。
貴方が掠めたそれが何なのか知りたくて。

「牡丹よぉ」

「なんすか勝也さン?」

だらりとだらけた午後も午後。
三時をとうに回ってそろそろ夕暮れ時か、丁度中途半端な陽射しが揺れる。
ゆぅらゆぅら。日の光りにくゆる煙に羨望など抱いて。
ああ、こんな風に昇って行けたら気持ちがイイでしょうねェ。

「よくこんな場所知ってたなァ?」

「はぁ。昔からよゥく来てましたんで…ねェ…でも久しぶりっすよ」

閉鎖病棟の5階、最上階。
俗にそう称されてしかし然して取り壊される風もなし。
怖がる俺をココに連れてきたのは、誰だったっけねェ…
ああ。あん人だ。


開く初音のはずかしく…まだ解けかぬる薄氷、か。


「マミーさんに教わったンすよ」
「…マミー、かよ」

俺から目をそらして。
舌打ちが聞こえましたよね。妬いてますか?
妬いてくださいなァ。そして俺をもっと持っていってくれれば俺はどんなに楽か。
もっと欲していただけたら、俺はもっと貴方にすがるコトが出来るのに。
貴方にすがっていただけるのに。
中途半端は、揺らぐんですよ…
貴方に欲してもらえないなら、
もしくは誰かにすがって抱かれて満たされてしまおうか、などと。
そりゃぁ安易だとは思いますがね…
俺の行き場が、ちょいと欲しいな、なんて、寂しくなったりしちゃうんですよねェ。
中途半端に立ち昇って消える煙。
ああ、そうか、気持ち良い訳なんてないのでしょうね。
自由に揺らぐことが枷がないコトが不安になる事も、ある…。
誰か、つなぎとめてくれ。
この、揺らぐ俺を、繋ぎ、とめて頂けませんか、勝也さん。

「ファミリーに入りたての頃に、連れてきてもらったンすよ。
 度胸試しだとか言われて…」
「…ふん…」
「わざわざ俺を一人にして消えたフリして驚かされました。
 腰が抜けましたよ実際、あん人はガキみたいで面白いけど
 又それが鬼でもあるんですよね…」
「…」

割れた窓ガラスから差し込む日の光。
マミーさんに連れてこられた時は、こんな光なかったっけなァ。
仰天して腰抜かしたら、大笑いされてそんで置き去り。ひでぇや実際。
思い出すと笑える話ですがねェ…
勝也さん…?
なんですか、痛い…肩が、イカレちまう…

「よく鳴く野郎だな」

掴まれた肩に身を捩ると、更に強くされて睨まれた。
肩の骨が軋む。怒った?怒り、ました、か。…嗚呼。

「聞いてりゃマミー、マミーとよ!なんだテメェは、俺を馬鹿にしてんのか?」
「そんなツモリじゃねぇですよ!…ッ、ちょ、痛い…」

そのまんま倒されて、勝也さんの目を上に見る。
俺を睨む目が、そう、俺にそれをもっと下さい。
唇か、それとも髪を引かれるのか、それとも前を引き裂かれる?
身体中がそれを望んで敏感になります…。
貴方の…傷で…俺をどっかに…

「そんなにマミーに惚れてんなら抱かれたらどうだよ、
誰にでも股開いて、なぁ?あ?」
「…抱かれたいとは思いませんよ、的外れ…」
「ああ?」
「マミーさんは憧れで力の象徴で、
俺の力を認めさせたい一番かっこいい人ですからねェ」
「なんだぁそりゃ。」
「勝也さん、俺が弱いと思ってるんでしょう?」
「……」

沈黙で、肯定ですか。
そう、いつしかマミーさんより弱ければ
「弱い」と言う方程式が出来ていた。
だから俺はマミーさんが好きなんですよ。
惚れてますよ。ぶち壊したいほどにね。
アレをどうにか出来たらそれは自分の力を認めさせたコトと同等だから。
抱いた抱かれたで、自分の力が認証されたと勘違いするような、
そぉんな、女々しい。
そんな馬鹿なこと、思いませんよ、俺は、男ですから、力を求めますから。
しかしアンタにぶち壊されたい俺がいるということに、
そろそろ気づいてくれてもイイんじゃァありませんか?
そして、何故壊されたいのか教えてくれても良いんじゃありませんか?

動かない勝也さんに、じれったくなって指を探る。
ちょいと触れた指にフイとそらされて。
置いてきぼりを食らったような、一人ぼっちの気持ちが押し寄せる。

「…ッ…触って、くれませんか…」
「誘うか、俺を…?」
「…いけませんか?」
「傷つけられて何が楽しい?俺はお前を壊すだけだ。
 壊して欲しいのか?どれくらい、だ?
 俺に引き裂かれて骨まで食らわれてぇか?」

その声に、身体中が熱く、火照る。
勝也さんが体を起こして、上向いた俺の首に手を伸ばす。
大きな手の。咽喉に食い込む指に酸素に喘ぐ。

「そんなに欲しいのかよ。淫乱が。こんな、コトされても、感じるのか?」
「…ッ…か…は…ッ」

指に力をこめて俺の頭を持ち上げて、床に叩きつけて。
ずしんと脳に響いた衝撃に、目を見開く…!
勝也さんの目が、まばたきをしない。
恐怖よりもそれを求めるのは、麻痺してしまったから?!
引き上げられて、床にもう一度。
強く目を閉じて、衝撃に耐える…
空気を欲して開いた唇に、熱い息がかかり、更にそれを塞ぐ。
気道を。指と、唇とで完全に押さえこまれて、嗚呼、もう、俺は煙のように…
ゆらりと意識が揺らめいて。
やっとの事で掴んだ首もとの太い腕。
筋肉の筋が浮かびあがり、その力の程度を知らせる。

脳裏に空白を感じて。
すべて、消え去ったのは、自分の意識を手放してしまった…から。




(コメント)
ウチのカー坊はボタン抱くとどうしてもキレるらしいですね(笑
ウチのジョジョのサーレーとギアッチョの関係と一緒。
そっくり。似すぎ。違うのは髪形だけ(それは絶対ない
やー、カーボタ良いね…
始めての時のとか書いてみたいね、
カー坊ってばアッチがアレっぽいし(←伏せすぎ
御所車◎2……勝也×ぼたん

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