俺の耳に、はっきりとした声が入った。
「お前が、殺したな!」
俺は訳のわからない叫び声を上げて、火掻き棒で老婦人を突いた。何度も何度も突いた。
焼けた服が飛び散る。
焼けた肉が飛び散る。
はっきりと何度も繰り返すその声は、男の声でもあり、女の声でもあり、子どもの声でもあり…
「ヒイィィィィィィィィ!!!!」
逃げ出した俺の背中に、どさりと何かが振ってきた。
振りむいた俺の鼻先に、人形の顔があった
その顔が、俺の顔になる。
俺は、火の中で燃えていた。
身体中に焼け爛れる感触が広がる!
先を見ると、俺が火掻き棒を構えて立っていた。
俺は俺に火掻き棒をつきたてる。
熱さの中に、新しい熱さが入り混じり、俺は半狂乱になった。
焼け落ちた俺を見て、火掻き棒を持った俺が肩をはずませている。
「終わったのかい?」
振り向くと、老婦人がそこでにこにこしていた。
怪談TOP/BACK/NEXT