人形は嫌いだ。愛らしいがゆえに嫌いだ。
俺ははさみを出すと、その髪をばさばさになるまで切ってやった。
今日は新しい入居者が館に来る。
俺はずっとそれを待っているのだった。
広い居間で、暖炉のすすを蹴飛ばしながら時間を潰す。
人形は箱にしまって、元の所に置いておいた。
誰かが見つけて、気味悪がって捨てるだろう、俺が手をわずらわせるものでもない。
しばらくすると、車の音がした。
玄関に出て扉をあけると、老婦人が立っていた。
「あなたが管理人さんでございますか」
「ああ。まぁ、入ってください」
俺の仕事はここからだ。
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